静かな1.0Lターボエンジン

 では走り出してみよう。まず感じるのは静かでスムーズな走りだ。イグニスの880~920kg(MZグレード)という軽量なボディに比べると、クロスビーは車体が大型化していることなどもあり、960~1000kg(MZグレード)と80kg重くなっている。だから軽快さという点ではイグニスのほうが上なのだが、イグニスの1.2L自然吸気エンジンの最高出力67kW、最大トルク118N・mに対して、クロスビーの1.0Lターボエンジンは73kW、150N・mで、特に最大トルクで差が大きい。それに、ターボが低回転域から効く設定なので、それほどアクセルを踏み込まなくても十分な加速が得られる。そのことが静かでスムーズな走りにつながっている。

排気量1.0Lの直噴ターボエンジン(写真:スズキ)

 もう一つ、筆者が好感を持ったのは、このターボエンジンが日本の小型車に多いCVT(無段変速機)ではなく、6速自動変速機(6AT)と組み合わされていることだ。CVTは変速比を無段階で最適な値に切り替えられるので燃費を稼ぐという点では有利なのだが、加速のダイレクト感という点ではやはり通常のATに一歩譲る。さらにいえば、この1.0Lターボ+6ATという組み合わせは、すでに同社の上級車種である「バレーノ」でお目見え済みなのだが、クロスビーではこの1.0Lターボエンジンに、マイルドハイブリッドシステムを組み合わせているのが新しい。

 スズキのマイルドハイブリッドシステムについてはイグニスを取り上げたこのコラムの第48回でもすでに紹介しているので詳細は繰り返さないが、出力2.3kWのモーター/発電機に、小型のリチウムイオン電池を組み合わせた非常に簡易なハイブリッドシステムだ。このシステムのメリットは、もちろん燃費向上にあるのだが、もう一つの重要な点は、アイドリングストップからのエンジン再始動が非常にスムーズなことだ。

 通常のアイドリングストップシステムでは、エンジンを再始動するときに「キュルキュル」というような騒音がある。これはスターターの軸が突き出して、スターターの軸に付いたギアと、エンジンのクランク軸のギアが噛み合うときの騒音なのだが、スズキのマイルドハイブリッドシステムではスターターではなく、エンジンとゴムベルトでつながっているモーター/発電機で再始動するのでギアを噛み合わせる必要がなく、静かにエンジンを再始動できる。筆者はエンジン再始動の騒音がけっこう気になるので、この部分の評価ポイントは高い。

 ただし、いくらか残念な点もあった。これまでに試乗したスズキの新世代プラットフォームを採用した車種は全般的に、車体剛性と足回りのバランスが良く、無理のない自然な走りが楽しめるのだが、今回のクロスビーは、このバランスの良さが若干スポイルされているように感じた。具体的には、足回りに対して車体剛性が若干負けているように思えた。

 イグニスよりも車高が高くなっているので足回りを硬くする必要があるのは分かるが、その結果として、路面からの衝撃がサスペンションを介して車体に伝わる際の車体の振動がイグニスなどよりも大きい。クロスビーのプラットフォームはAセグメント用なのだが、より上級のBセグメント用プラットフォームを使うスイフトのほうがクロスビーよりも車両重量はむしろ軽い。クロスビーほどの車両重量を支えるためには、Aセグメント用のプラットフォームではやや力不足だったのかもしれない。

 最後に燃費について触れておこう。今回の試乗コースは、スズキの試乗会でよく使われる幕張周辺の一般道だったのだが、交通の流れに沿った走行で燃費計の読みが18.9km/Lと非常に良好だった。ただし、ターボ車はアクセルを踏み込むと急激に悪化する特性がある。今回の試乗コースではアクセルを強く踏み込む場面はほとんどなかったが、ターボエンジンの高出力を楽しもうと思ったら、それなりの燃費悪化を覚悟する必要があるだろう。