そしてもう一つのパワートレーンが、先程紹介したバレーノに最初に搭載された排気量1.0L・直列3気筒の直噴ターボエンジンだ。バレーノとの違いは、バレーノ向けがハイオクタンガソリン仕様だったのに対して、スイフト向けはレギュラーガソリン仕様になっていることだ。最高出力はバレーノの82kWに対して、スイフトでは75kWに低下しているが、ユーザーの懐には優しい仕様といえるだろう。

排気量1.0L・直列3気筒の直噴ターボエンジン。搭載されるのはバレーノに次いで2車種目
排気量1.0L・直列3気筒の直噴ターボエンジン。搭載されるのはバレーノに次いで2車種目
[画像のクリックで拡大表示]

 まず試乗したのはマイルドハイブリッドを搭載したスポーティ仕様の「1.2 HYBRID RS」である。気になったのは、軽量化でボディ剛性が低下していないかということだが、それは杞憂だった。スズキの新世代プラットフォームの車種は、軽自動車用は「アルト」で、1.0LクラスのAセグメント用は「イグニス」で、すでに体験しているが、全体の感触としてはこのスイフトも似ている。ドイツ車の分厚い金庫のような車体剛性というわけにはいかないが、路面からの比較的大きな衝撃が加わってもだらしなく車体が振動することなく、素早く減衰させるので、走っていて気持ちがいい。しかも、当たり前のことだが、軽自動車用、Aセグメント用に比べると、明らかに走行感覚は上質になっている。それでいて、アクセルを踏み込むと、軽量車体のメリットを発揮して、軽快に加速していく。

 試乗したのがスポーティグレードのRSなので、足回りは比較的引き締まってはいるのだが、段差を乗り越えたときでも直接的な衝撃を伝えてくることはなく、ダンパーがちゃんと仕事をして、角を丸めてくれるので、不快さを感じることはない。唯一残念なのは、変速機がCVTなので、アクセルを踏み込むと、エンジンの回転数が急激に上昇するため、軽自動車用エンジンの騒音を思わせるようなちょっと安っぽいエンジン音が室内に入ってくることだ。もっともこれは、CVTを搭載しているクルマ全般にいえることだから、スイフトに限ったことではないのだが。

 その後に乗ったのが、1.0Lターボを積んだRStというグレードなのだが、これの感触がとても良かった。足回りはマイルドハイブリッドのRSと共通なのだが、CVTではなく6速自動変速機と組み合わされているので、アクセルを踏み込んでもむやみにエンジンの回転数が高まることなく、ターボも強みを生かしてトルクで加速させていく。このため、こちらは3気筒エンジンであるにもかかわらず、4気筒のマイルドハイブリッドよりも走りが上質になっている。3気筒エンジンだから、エンジン音が安っぽいのではないかと懸念していたのだが、実際にはそういうことはなく、全体に静粛性は4気筒エンジンより高く感じた。

 最後に、マイルドハイブリッドではない普通の1.2Lエンジンを積んだ「XL」というグレードに乗ったのだが、こちらはRSよりも若干ソフトなサスペンションのセッティングになっている。RSでも不快さはなかったが、こちらは足回りがよく動く分、街乗りではRSよりも軽快に感じる。また、加速時にマイルドハイブリッドのようなISGのアシストがないので、若干加速が鈍いような感じはするのだが、これは比較しているからそう感じるのであって、これだけを乗れば、そうは感じないだろう。ただし、高速道路を走る機会が多く、より安定した走りを求めるならRSのほうが良さそうだ。

 燃費についても触れておこう。今回の試乗コースは幕張の一般道路だったのだが、RSのマイルドハイブリッドが燃費計の読みで18.7km/L、ターボエンジンのRStが16.5km/Lという結果だった。ただし、RStは車両の撮影場所を探すために、RSよりも低い速度領域で走る距離が長かったので、同じ条件なら17.0~17.5km/L程度にはなったと思う。RStにはアイドリングストップ機能がないので、そのことも考慮すれば、良好な値といえるだろう。マイルドハイブリッドのRSと、ターボエンジンのRStでは、JC08モード燃費を比べると27.4km/Lと20.0km/Lとかなり差があるのだが、実用上の差はそれほど大きくないと予測できる。

 ちなみに、通常の1.2Lエンジンを積んだXLグレードの燃費は18.9km/Lと、マイルドハイブリッド仕様を上回ったのだが、こちらは試乗時間が短く、低速走行の距離も短かったので横並びでは比較できない。いまどきのクルマとして、通常の1.2Lエンジン搭載車や、ターボエンジン搭載車にアイドリングストップ機構がないのはやや首をかしげるのだが、もし筆者が新型スイフトの中から選ぶとしたら、ターボエンジンを積むRStにするだろう。マイルドハイブリッドのRSと、ターボエンジンのRStは、どちらも価格が約170万円で、ほぼ同等に設定されていることも、RStを魅力的に見せている。

この記事はシリーズ「クルマのうんテク」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

ウェビナー開催、「なぜ世界はEVを選ぶのか」(全2回)

 日経ビジネスLIVEでは2人の専門家が世界のEV事情を解説するウェビナーシリーズ(全2回)を開催します。

 9月30日(金)19時からの第1回のテーマは「2035年、世界の新車6割がEVに 日本が『後進国』にならない条件」。10月14日(金)19時からの第2回のテーマは「欧州電池スタートアップのCTOが現地報告、巨大市場争奪の最前線」です。各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。


■第1回:9月30日(金)19:00~20:00(予定)
テーマ:2035年、世界の新車6割がEVに 日本が「後進国」にならない条件
講師:ボストン コンサルティング グループ(BCG)マネージング・ディレクター&パートナー滝澤琢氏

■第2回:10月14日(金)19:00~20:00(予定)
テーマ:欧州電池スタートアップのCTOが現地報告、巨大市場争奪の最前線
講師:フレイル・バッテリー(ノルウェー)CTO(最高技術責任者)川口竜太氏


会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
主催:日経ビジネス
受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。

>>詳細・申し込みはリンク先の記事をご覧ください。