最後に、注目の自動駐車機能に触れておこう。今回は自分では操作せず、広報担当者が縦列駐車を実演したのを助手席で体験しただけだが、その限りでは非常に上手に実行したという印象だ。現在でも、他社では駐車アシスト機能が実用化されているが、これはステアリング操作だけが自動化されていて、アクセル、ブレーキ操作はドライバーがしなければならない。これに対して、テスラのシステムは、アクセル、ブレーキ操作まで含めてすべてを自動で実行してくれる。縦列駐車は苦手というドライバーも多いだろうから、これだけでも欲しいというドライバーは多いかもしれない。

 現在は国連の規則で、時速10km/h以上での自動操舵機能は世界的に禁止されている。自動駐車機能は時速10km/h以下なので操舵の自動化は問題ないが、公道走行で、手放し運転が禁止されているのはこのためだ。ただ、この規則は改正の動きが進んでおり、2017年中に、手放し運転が可能になるとの観測もある。そうなれば、今モデルSを購入する人も、大手をふって手放し運転ができるようになるだろう。

 一方で、現在の法規では、たとえ運転操作が自動化されても、依然として安全確保の責任はドライバーにある。にもかかわらず、日本よりも一足早く自動運転機能が搭載された米国では、ドライバー席に人間が座らずに、自動運転の様子を撮影したような動画も「YouTube」に投稿されている。これに危機感を抱いたテスラは、最新のソフトウエアアップデートで、住宅街の通りや中央分離帯のない道路では自動運転機能が利用できないようにした。

本当に必要な高齢ドライバーでは使いにくい?

 今回の自動運転機能を体験して筆者が強く感じたのは、1つの大きな矛盾だ。自動運転機能に対して最もニーズが高いのは、注意力や反射神経が低下している高齢のドライバーだろう。そして既に現在の技術レベルでも、自動運転機能はかなりのことを実現できる。一方で、その操作方法はまだ高齢のドライバーには難しく、機能の限界を十分に理解して使いこなすのは相当にハードルが高いだろうとも感じた。高齢ドライバーにも使いやすい、やさしい自動運転機能のニーズは高い。

 もう1つ感じたのは、自らが明日を切り開くのだ、というテスラという企業の強い意思だ。今回テスラが商品化した機能は、恐らく国内の完成車メーカーでも実現可能だろう。しかし日本の企業がいざ商品化しようとしても、「事故が起こったらどうするんだ」とか「ドライバーが手放し運転したらどうするんだ」という議論で、結局は先送りになってしまいそうだ。

 そうした中で、実用化で先行したテスラは、実際の消費者にどのような使われ方をするかというテストコースでは手に入らないデータを収集することができる。大企業には真似のしにくい高いリスクを取りながら、確実に技術の完成度を高めていくこの戦略は、まさにベンチャー企業の戦い方だと感じた。

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ウェビナー開催、「なぜ世界はEVを選ぶのか」(全2回)

 日経ビジネスLIVEでは2人の専門家が世界のEV事情を解説するウェビナーシリーズ(全2回)を開催します。

 9月30日(金)19時からの第1回のテーマは「2035年、世界の新車6割がEVに 日本が『後進国』にならない条件」。10月14日(金)19時からの第2回のテーマは「欧州電池スタートアップのCTOが現地報告、巨大市場争奪の最前線」です。各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。


■第1回:9月30日(金)19:00~20:00(予定)
テーマ:2035年、世界の新車6割がEVに 日本が「後進国」にならない条件
講師:ボストン コンサルティング グループ(BCG)マネージング・ディレクター&パートナー滝澤琢氏

■第2回:10月14日(金)19:00~20:00(予定)
テーマ:欧州電池スタートアップのCTOが現地報告、巨大市場争奪の最前線
講師:フレイル・バッテリー(ノルウェー)CTO(最高技術責任者)川口竜太氏


会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
主催:日経ビジネス
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