モデルSは、リチウムイオン電池パックを床下に敷き詰めたような構造をしており、リアに搭載したモーターで後輪を駆動する。フロントにモーターを追加し、4輪駆動とした仕様もある。また搭載する電池量も2種類用意しており、大容量電池を搭載した2輪駆動仕様の「モデルS 85」の航続距離は、欧州の測定サイクルである「NEDC」の場合で502kmと発表されている。今回試乗したのは、大容量電池と4輪駆動を装備し、さらに後輪のモーターの出力を通常仕様の193kWから375kWに向上させた高出力グレード「P85D」だ。航続距離は491km(NEDC)となる。価格は1369万円(消費税込み)だ。

 さてこのクルマ、普通のクルマとはいろいろと「お作法」が違う。まず、通常の状態だと、ドアハンドルが車体の中に引っ込んでいて、いったいどうやってドアを開けたらいいか分からない。もしキーを持っていれば、クルマに近づくだけで自動的にドアハンドルがせり出してくるのだが、もし持っていなければ、ちょっと押してやれば、中からするするとドアハンドルが出てくる。そもそもキーには、通常のリモコンのようにドアオープン、クローズのボタンがなく、キーを持ったままクルマに近づけば自動的にロックが解除され、クルマから離れれば自動的にロックされるのだ。

普段はドアハンドルが収納されている(左)が、キーを持ってクルマに近づくと、自動的にせり出してくる(右)
普段はドアハンドルが収納されている(左)が、キーを持ってクルマに近づくと、自動的にせり出してくる(右)
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 ドライバーズシートに身体を沈めると、次に普通のクルマと違うのが、エンジンのスタートボタンがないことだ。もはや現代のクルマで、キーを差し込む穴がない(そもそも、キーといっているがカギの形はしていない)ことには驚かないが、スタートボタンがないと、さすがに戸惑う。じつは、ブレーキペダルを踏むだけで、システムが「ON」の状態になるのだ。この状態で、ステアリングの右側に生えている「シフトレバー」を操作して「D」レンジにすると、もうクルマは走り出せる状態になる。ここでも、パーキングブレーキを解除して…などといった操作はいらない。

 走りだしてしまえば、あとは通常のクルマとそれほど違うことはない。前後の合計で、568kWものモーターを積んでいるだけに、ひとたびアクセルペダルを踏み込めば、その加速は暴力的といってもいいほどだ。しかも、じつはこのクルマには「インセイン」という高出力モードがあり、こちらにすればさらに鋭い加速力が得られるのだが、そのレベルは、もはや日本の公道では、その実力を確かめるのがためらわれるほどだ。

これまでと何が違うのか

 それでは早速、自動運転機能を試してみよう。これまでにも、今回のモデルSに近い運転支援機能を搭載しているクルマはあった。例えば、このコラムの第6回で取り上げた富士重工業の「レヴォーグ」や、第41回で取り上げた独BMWの「7シリーズ」でも、アクセル、ブレーキの操作なしに高速道路で一定の速度を保ち、先行車に近づくと自動的に一定の車間距離を保つ「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」や、車線の中央を保つようにステアリング操作を補助する機能などを備え、高速道路での自動運転に近い機能を実現していた。こうした従来の運転支援機能と、今回モデルSが搭載している自動運転機能とでは、どんな違いがあるのだろうか。

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