今後、自動運転の機能が進化し、人間の関与を必要としない完全な自動運転が実現した場合、クルマを利用する形態が現在の「所有」から、必要なときにクルマを呼び出す「利用」へと変わる可能性があることを、このコラムの第11回第35回でも指摘してきた。そうした時代に、クルマの所有をいかに維持していくかは完成車メーカーにとっては重要な課題だが、クルマに愛着を持ってもらうための新しい手段として、人間とクルマの間に、新しい、より密接な関係を作り出せないかという模索が始まっているということなのだ。

 今回このコンセプトカーに盛り込まれた機能はまだ完成しているわけではなく、要素技術を研究している段階だが、トヨタは、今後数年内に今回のコンセプトカーに盛り込んだ技術の一部を搭載した実験車両で実証実験を公道で実施する予定だ。

オープンイノベーションを目指すホンダ

 こうした「人間とクルマの新しい関係」の構築を目指しているのはホンダのコンセプトカー「NeuV」でも同じだ。このコンセプトカーは、自動運転機能を備えた小型EV(電気自動車)コミューターで、ドライバーの表情や声の調子からストレスの状況を判断して安全運転のサポートを行うほか、ユーザーのライフスタイルや嗜好を学習して、状況に応じた選択肢の提案を行うなど、狙いとしては極めてトヨタのConcept-愛iに近い。

ホンダが出展したコンセプトカー「NeuV」

 興味深いのは、今回ホンダがこのコンセプトカーをCESに出展した最大の狙いがオープンイノベーションの加速にあるということだ。前回のこのコラムでも触れたように、ホンダはグーグルと自動運転車の開発で提携する検討を始めた。今後クルマの自動化やコネクテッド化が急速に進む中、単独ですべての開発を手がけるのは難しいと判断し、積極的に他社と協力する姿勢を打ち出している。今回10年ぶりにホンダがCESに出展したのは、そうしたオープンイノベーションへの積極姿勢を示すのにCESが格好の場だと判断したからだ。

 実際、NeuVに搭載しているAI技術「感情エンジン HANA(Honda Automated Network Assistant)」は、ソフトバンクグループ傘下のcocoro SBが開発したAI技術「感情エンジン」をベースにホンダと同社が共同で開発しているもので、機械に擬似的な感情を持たせることで、人間とのより自然なコミュニケーションを実現することを狙っている。

 NeuVの場合も、想定している機能がすべて完成しているわけではなく、むしろホンダの目指す開発の方向を示すことによって「一緒にやりたい」というパートナー企業を発掘することを狙っている。今回のCESでは、海外のベンチャー企業と開発中の音声認識技術やディスプレイ技術も展示し、すでに具体的な事例が出始めていることもアピールした。

 トヨタとホンダ以外でも、今回のCESでは人間とクルマのHMIに焦点を当てた展示が多かった。ますます高度になり、複雑になるクルマの機能。自動運転や、通信のセキュリティ確保など、機能そのものを実現させる技術開発も重要だが、それを使いこなすための技術開発も、それらに負けず劣らず重要だという認識が広がってきていることを強く認識した今回のCESだった。