慎重だった姿勢を一変

 まだトヨタ内でも温度差はあるようだが、今回の発表の一番画期的な点は「所有」へのこだわりを捨てたことだろう。いや、もちろん所有へのこだわりを完全に捨てたわけではない。トヨタの担当者によれば、クルマが“愛“のつく工業製品として、今後もパーソナルなものであるという考えは変わらないという。一方で「すべての人に移動の自由を」という思いのもと、運転することができない人なども含めて、社会性の高いモビリティサービスのためのプラットフォームを提供していきたいというのが、今回「e-Palette Concept」を提案した理由だとしている。しかし、いずれにせよトヨタがこれまでの枠を越えた新たな一歩を踏み出したことは確かだ。

 これまで筆者は、技術水準そのものはさておき、変化を先取りする姿勢という点では、国内では日産自動車が最も進んでいると思っていた。EV(電気自動車)の将来に対して懐疑的な向きが多い中で、2010年に世界で初めて量産EV専用車「リーフ」を商品化したのも日産なら、トヨタやホンダが人間のドライバーを必要としない「完全自動運転」に躊躇しているときに、いち早く完全自動運転を目指す方針を打ち出したのも日産だったからだ。

 しかし、こと「サービス化」ということでは、まだ日産も専用車両を投入するほどの明確な方針は打ち出していない。日産はこの3月にリーフをベースとした無人運転車を使ったライドシェアサービス「Easy Ride」の一般消費者も参加する実証実験を、DeNAと共同で本社のある横浜・みなとみらい地区周辺で実施する予定で、クルマのサービス化にも当然目配りをしている。

日産自動車が3月から実証実験を始める無人運転車を使ったライドシェアサービス「Easy Ride」のイメージ(写真:日産自動車)

 しかし、昨年の東京モーターショーで自動運転技術の開発担当者にモビリティサービス専用の車両を開発する意思はないのか尋ねたときには、かなり消極的な返事が返ってきた。一般消費者向けの商品に比べて、そうしたサービス向けの車両は見込める台数が少ないので、ビジネスとしてうまみが少ないというのがその理由だった。

 だから、これまでモビリティサービスに慎重な姿勢だったトヨタが、しかも採算性の点でまだ未知数の部分が多いモビリティサービス専用車種の商品化に乗り出すと発表したこと、しかもその車両が、EVで完全自動運転(レベル4)という、これまでトヨタが商品化を躊躇してきた条件を併せ持っていることなどを考え合わせると、こういう車両の商品化を表明したこと自体が、まずは非常に画期的なことだとご理解いただけると思う。