ビッグデータ分析ツールを用いて生産効率の最適化を図ることも可能である。たとえば、マッキンゼー独自のツールである「ACRE」は、衛星で収集した気象、土壌、湿度データを利用して、土地に最も合った農作物と最大収量ポテンシャルを予測する。これらのツールを活用することで農業の生産性を高めることができる(■図表6)。

■図表6 最適な土地を選び、その生物学的ポテンシャルを最大限に引き出すことが、高収量生産を実現する鍵となる
資料: マッキンゼー

 さらに、バリューチェーン全体を見渡せば、アグテックによるソリューションやデータを活用できる機会は生産現場だけではない。日本の農業がこうした機会を捉えて、生産から流通に至るバリューチェーン全体を高度化する必要があるし、それは十分可能なはずだ(■図表7)。

■図表7 デジタルの活用による改善の機会は農場以外にもある
資料: マッキンゼー

日本の農業がグローバルチャンスを掴むために

 ここまで述べてきたことを前提に考えると、今後、日本の農業が注力すべき方策は以下の5つだ。

(A) 高品質、安定供給、コスト優位性を実現するための、農業の上流の原材料の確保に関わる戦略の策定

(B) パイロットとして選ばれた地域(アグリゾーン)におけるベストプラクティス(最善策)の実施を通じた、他国よりはるかに高い農業生産コストの削減

(C) 海外では一般的な技術を日本で導入し、農業のサプライチェーンを最適化することによるコスト削減

(D) 食品加工や流通など、農業の周辺産業との協力による国内外の消費者需要と供給のマッチングを通じたムダの削減

(E) アグテックのような将来技術への、国内外のバリューチェーン横断的な投資

 こうした変革を日本で実現するためには、複数地域で一斉に展開するのではなく「段階的アプローチ・パイロット(限定された範囲で試行する方法)」を採用することが望ましい。

 具体的には、日本の農業セクターがタッグを組み、まず特定のパイロット地域(試験的に行う地域)を設け、「圧倒的に生産性が高いベストプラクティス(最善策)」を実現させる。いわば、21世紀の「大潟村プロジェクト(※ かつて、食糧増産のために秋田県・八郎潟の干拓事業が、国家的プロジェクトとして行われた)」である。

 この成功事例をもって、より「経済合理性のある生産者」を次々に巻き込み、他の地域にも展開していく、というアプローチを採用すべきである。

 この手法は、オランダや米国に先行事例がある。これら世界の事例も参考にしながら、日本の国内外の農業における環境変化に対応しつつ、日本の農業および日本の生産者の生産性がよりよくなっていくことを期待したい。