※上記筆者のうち、田中氏・山田氏は日本語版の監修

前回は、日本の農業の特徴とグローバルトレンドについて確認した。今回は、食料需要の急増など、根本的な変化に対応して起きている国際競争や、アグテック(農業とテクノロジーの融合)などの「農業らしからぬ」新たな潮流を解説しつつ、日本の農業がグローバルチャンスを掴み取るための道筋を示したい。
日本の農業が解決すべき宿題
まずは、日本の農業の課題を、先に提示しておこう。
日本の農業が進むべき方向について、日本政府は食品産業および農業に関して2つの高い目標を掲げている。農産物生産量を2013年の5千万トンから2025年までに5千4百万トンに大幅に増やし、生産者の所得を現在の290億ドルから350億ドルに約21%増やす、というものだ。目標の達成には、輸出の増加や生産コストの削減が必須になる。
この目標を実現するために、「日本における農業の発展、生産性の改善に向けて」のレポートの中でマッキンゼーは、以下の5つの宿題を解決する必要があると提言している。
農業の上流にあたる農薬、種子、肥料などの原材料は海外勢に押さえられている。当該諸国との貿易協定を結ぶなどして、原材料や食料・穀物の上流確保をした上で、国としての購買・仕入れ・コスト低減を達成できるか。
(B) 農業原材料コストの削減:
日本は、他国よりはるかに高い農業生産コストを削減できるか。例えば、肥料や農薬などの資材のコストを低減できるか。
(C) データに基づくサプライチェーン(供給網)を含めた、農業バリューチェーン(価値とコストを付加する連鎖)の効率化:
生産コストのみならず、農業バリューチェーン全体の最適化により、コストを削減できるか。例えば、ビッグデータを活用すれば、生産者はより正確に調達・生産日程を予測し、バリューチェーン効率化に寄与できるはずだ。
(D) エンドマーケットとのコラボレーション:
生産者や食品加工会社、物流会社など農業の周辺産業と協力し、変化する国内外の消費者需要に応えることが可能な供給の仕組みを構築できるか。そして、それら周辺産業との協力を深めることで、生産コストを抑制しながら、需要の変化に迅速に応えることができるか。
(E) アグテック(農業とテクノロジーの融合)の可能性:
新たなテクノロジーは農業に大きな価値をもたらす可能性を秘めている。例えば、ビッグデータを活用すれば、天候や土壌の状態、その他の要因に関する情報を選り分けて、最適な肥料や作付けパターンなどを提案できるはず。バリューチェーン横断で、日本のコンテクスト(状況、背景)に沿ってアグテックの適用を図り、日本の高い賃金体系を補う形で生産性向上を実現できるか。
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