世界的な食料需要の増大と生産の停滞から起こるのは、食料価格の高騰だ。1990年からだけを見ても、2007~08年と2011年に食料価格がピークを迎え、食料危機とも言える状況に陥った。2002~04年を100とした食糧価格指数で見ても、2度のピーク時は200を超えた。現在(2016年時点)では、食料価格は直近のピーク時に比べれば低下しているが、長期的には今後再び上がっていくと想定される(■図表4)。

■図表4 2007~2008年と2011年の食料危機は、食糧価格の大きな変動期の到来を告げる警告かもしれない
資料: FAO食品価格指数、Ronald Trostle(米国農務省)、Peter Timmerワーキングペーパー163(世界開発センター)、世界銀行、マッキンゼー分析

農産物の栄養価が低下したため、質への要求が高まる

 ■図表5は、農産物43品目の栄養価を分析した結果だ。1950年以降1999年までに、ほとんどの栄養素の含有量が低下している。キュウリの鉄分は75%も減り、トマトのカルシウム、レタスのビタミンB2も半分以下になった

■図表5 より栄養価の高い食料へのニーズ: 食品の栄養価が低下
1950~1999年における農産物43品目の栄養素含有量; mg/100g
(1)平均栄養素含有量 43品目の栄養素をDavis, Epp and Riordan 2004の手法で測定した

資料: Davis, Epp and Riordan 2004、米国農務省、マッキンゼー分析

 この結果、昨今の健康志向ブームを指摘するまでもなく、改めて農産物の質を要求するトレンドが起こるものと予想される。

 ここまで見てきたところで、グローバルに分析すると、需要の爆発的増加や、土地の荒廃や水資源不足による生産性の伸び率低下、農作物の栄養価の低下といったマクロトレンドがみられることが分かって頂けただろうか。

 翻って日本の農業を眺めると、和食などの「ユニーク」な強みはあるものの、生産コスト高といった多くの課題もありそうだ。

 次回(下)は、こういった課題解決の方向性に加え、「アグテック(農業とテクノロジーの融合)」、「デジタル農業」などと言われる新たなウェーブを紹介し、読者の皆さんの農業に対する見方を一新したいと思う。