この大きな価格差には、構造的要因がある。今回コストを比較した中国、米国とは別の国になるが、韓国のこれら農業原材料の購買プロセスと比較すると、差を生む要因が分かりやすい。

 韓国の肥料業界などは、既に業界内の統廃合が完了していることもあって、原材料の調達は、少数のメーカーが大ロットで海外の調達先と直接取引をしている。これによって、商社などの輸入代理業者へのマージンがまず発生しない。加えて、日本の港は他国と比較すると水深が浅いため、1隻当たりの積載量を減らさざるを得ない。韓国との比較では10%程度は少ない積載量になる。さらに日本では、商社が輸入をしているために、商社の複数の取引先に対応して複数の寄港が必要だが、韓国ではそれがないのだ。

非常に小さく断片的だが、肥沃な農地

 日本は、農業経営体全体の8割を、所有耕地面積2ヘクタール以下の生産者が占めている。国土の広さなど、米国や中国よりも日本の条件に近いEU諸国の中で、ポルトガルやイタリアも似たような状況(経営体数や中山間地比率が日本と同水準)だが、2ヘクタール以下は5割にとどまっている。

 日本では3%に過ぎない10ヘクタール以上の農地を持つ生産者が、ドイツ、デンマーク、フランス、オランダでは全体の6割弱~8割弱を占める。これらの国と比較すると、日本は農業生産効率上、不利な状況となっていることがわかる(■図表1)。

■図表1 ヨーロッパの主要国と日本の耕地面積別経営体数の内訳
日本は中山間地比率が高いなどの理由で、経営体当たりの農地面積が小さい
国名=の後の数字の単位は、千経営体。円グラフの中の数字の単位は%。円グラフの下のグレー地の楕円の中の数字は、中山間地比率(%)

資料: ユーロスタット、欧州委員会、農林水産省、マッキンゼー分析

 だが、悪いことばかりではない。農地の用途別割合を米国、オーストラリア、中国と日本を比較すると、日本の農地の80%は水田もしくは畑であり、米国、オーストラリア、中国のように、農地の60~80%が牧草地である国とは内容が異なる。水田が農地の50%以上を占めているということは、総体として農地の水資源が豊富であることを示している。

輸出は伸び悩んで来たが、和食ブームが追い風

 日本からの農産物の輸出は、1960年代以降、年間30億ドル内外でほぼ一定だ。諸外国の中で、例えば米国、オランダ、ドイツが1970年代以降、急速に農産物の輸出を増やし、数倍から十数倍になったのと対照的だ。

 その反面、食料品の輸入を考慮した場合、日本の輸入量は1990年の360億ドルから2013年の610億ドルに増加した。年率にすると4.2%増となる。一方で、日本の農業GDPの成長率は、同じ期間で年率マイナス2%である。

 だが、「和食」(日本人の伝統的な食文化)が、ユネスコの世界無形文化遺産に登録されたことが転機になる可能性がある。日本政府は、食品および農産物の輸出額を2020年までに100億ドルに増やすという高い目標を掲げた。実際、2014年には輸出額が60億ドルを超え、2015年は10月までに60億ドルを達成しており、追い風が吹いていると言える。

 では、ここで目を世界に転じて、グローバルに見たマクロトレンドを確認しておきたい。