
訪日外国人の数は年間33%も増加した
2011年から2015年にかけて、日本を訪れた外国人(訪日外客)の数は年間33%も成長した。これは世界でも最速の成長率である。
日本政府は、こうしたインバウンド観光が日本経済を成長させる強力な原動力になり得ると考え、年間の訪日外客を2015年の1,970万人から2020年には4,000万人にまで倍増させ、訪日外客が日本国内で消費する額を3兆5,000億円から8兆円に急増させるという大きな目標を立てた。
日本の観光産業は大きな節目を迎えている。執筆者が所属するマッキンゼーは、最新レポート「日本の観光の未来: 2020年への持続可能な成長に向けて」で、日本のインバウンド観光の目標達成に向けた課題と、取り組むべき方策を提言した。本稿でそのエッセンスをご紹介する。
GDPに占める「観光産業」の割合はまだ低い
訪日外客の数が急増しているため、観光産業の収益は拡大しつつあるが、その規模は依然2014年時点で国内総生産(GDP)全体のわずか0.5%にとどまり、旅行者に人気のアジアや欧米の国々と比較するとはるかに低い。
例えば、タイは10.4%、フランスは2.4%、米国は1.3%である。では、この差を埋めて、2020年の目標を達成する上で障害になる課題は何だろうか。それは以下の3点だ。
(1) アジア以外からの訪日外客が少ないこと
(訪日旅行者の国籍の偏り)
(2) 東京・京都・大阪の3大都市に旅行者が集中しすぎていること
(訪日旅行者が行く、日本国内の地域の偏り)
(3) 主要都市の観光関連インフラのキャパシティ不足
訪日旅行者の国籍に偏り、アジアからが大半
日本には、訪日外客の国籍に大きな偏りがある。2015年に日本を訪れた旅行者の84%はアジアの旅行者であり、東アジア(中国、香港、韓国、台湾)だけでも72%だ。仮にこの傾向が続くと、2020年には東アジアの旅行者が全体の78%を占めることになる。一方で日本以外の観光国の多くは、近隣地域以外の外国人旅行者を巧みに誘致している。例えば、米国とタイは、近隣地域以外からの旅行者が三分の一を超えている。
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