B2C市場では、膨大な個人情報をどう取り扱うかのルール作りが必要だろう。行政やユーザも巻き込んで、ガイドラインを策定するのも手だ。各企業は、IoTを前提とした戦略作りが欠かせない。なぜなら、前述のように、IoTにより間接部門としてのIT部門が収益部門に躍り出る可能性を秘めている。データに基づく意思決定プロセスの構築が必要となり、社員に求めるスキルセット、人材確保の方法が変化するからだ。
IoTのメリットを享受する我々ユーザ側にもいくつかの心構えが必要だ。第一に、新たな技術やサービスを試して、実際に使ったユーザがより多くのメリットを享受することになるという点だ。メリット享受の格差が、サービスを試すユーザと使わず嫌い・知らないユーザとの間で拡がっていく。ユーザとして新たな技術・サービスに対してのアンテナを張っておくことが大事だ。
2001年宇宙の旅が間違った点
一方で、個人情報に対して、プライバシー保護の観点でさらなる注意をユーザ自身が持つことが求められる。特に新たなサービスにサインアップする際に、サービスプロバイダが要求する個人情報へのアクセス権の内容については確認すべきだ。政策による個人情報保護の動きはあるが、個人個人が持つ責任は大きくなるだろう。
さて、映画で始めたこの回なので、最後も映画の話で締めようと思う。スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」は、キューブリックが当時のベル研究所の協力を得て「2001年にコンピューターはどうなっているか」を予測して制作したものだ。
この映画についてのあるエピソードを、私の知人が90年代末の米シリコンバレー、それもゼロックスのパロアルト研究所で開かれたセミナーで聞いた話として披露してくれた。
セミナーの講演者は「HAL伝説」の編者のデイヴィッド・ストーク氏で、「2001年宇宙の旅で描かれたコンピューター技術は、AIや読唇術などすでに実現されているものばかり。ただ、一つだけコンピューターの将来について間違った点がある。それは何か」と会場に問いかけたそうだ。
読者のみなさんはお分かりだろうか? ストーク氏の種明かしは「コンピューターが大きくなると予測した点」だった。予想に反してコンピューターは、どんどん小さくなったが、そのおかげでIoTという技術が生まれたのだから、文句は言えないだろう。
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