これらの変化は、さまざまなコスト削減につながるだけではなく、我々の仕事の仕方に大きな変化をもたらす。たとえば宇宙開発の分野では、宇宙ステーションで必要な工具は、これまでなら地球から実際に運ぶわけだが、3Dプリンターを設置することで、瞬時に現地調達をすることが可能だ。サプライチェーンにおけるさまざまな既成概念が大きく変わる一例だ。
メーカーがソフトウエア産業、サービス産業に
ここまで読んで、賢明な読者であればお気づきになることがあるだろう。Withingsのようなサービスを、メーカーが顧客に売った自社製品について提供したらよいのでは?
それを実行に移しつつあるのが米ゼネラル・エレクトリック(GE)だ。同社のジェフリー・イメルトCEO(最高経営責任者)は、GEを「分析とソフトウエアの会社にする」方針を明らかにしている。
IoTの技術を使えば、同社が製造する航空機や発電設備など、製品やプラントを構成する各部品や機器にセンサーを取り付け、稼働状態をリアルタイムでモニターすることは可能だ。ハーレーのような「予測」メンテも可能であるし、効率的な運航方法などを提案することさえ可能だ。
あらゆる製品、部品にセンサーを取り付け、データ収集と分析を可能にすれば、製品を顧客に納入したら終わりではなく、ソフトウエアをテコにしたサービスを提供することができる。企業で、自社内向けに作業をしていたメンテナンス部門やIT部門が、一転してB2B市場の収益部門に変身するわけだ。
利用されているデータはたったの1%の例も
こうした動きは今後、ますます加速するはずだ。なぜなら、IoTを支える要素技術のコストは劇的に下がり続けているからだ。半導体の価格は過去3年で半減し、MEMSセンサーは35%減、RFIDタグは1個15セントが5セントになった。クラウド上で1ギガバイトのデータを保存するコストは、2010年の25セントから2014年には0.24セントと100分の1になった。
一方で、せっかくのビッグデータも「宝の持ち腐れ」となっているケースも多い。[図2]は、ある油田プラントの事例だ。油田のリグに3万個ものセンサーが取り付けられているのに、収集したデータの99%は担当責任者に届く前に失われていた。
上記は極端な例だが、IoTのインパクトを最大化するためには、業界全体、行政が取り組むべき課題がいくつかある[図3]。第一に、相互運用性の確保が不可欠だ。センサーが発信するデータのフォーマットやデータを送信するプロトコルは標準化されておらず、お決まりの乱立とデファクト獲得競争に陥る恐れがある。
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