ウエアラブル端末市場で世界トップの米Fitbitは、「企業向けウェルネス事業」を拡大している。同社の端末を大量購入して、社員に配布する企業が増加しているからだ。なぜか? 例えば、石油大手のBP(ブリティッシュ・ペトロリアム)は、社員の日々の歩数を記録して、翌年の健康保険料引き下げの判断に利用している。

 Fitbitは昨年9月、HIPAA(米国医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)の認証を取得した。同法は医療機関などに、患者のデータの機密保持のための手続きを定めることを義務付けている。端末を通じて集まるビッグデータの使い道を考えれば、Fitbitにとっては当たり前の手順と言えそうだ。

「経験や勘」よりリアルタイム分析

 プロスポーツの世界で、「経験と勘」だけを頼りにした指導、トレーニング、ゲームプランの検討が時代遅れなのは当たり前だ。一方、野球のようにゲームが度々中断する形式のスポーツの場合、投手の配球データなどを参考に、その場でデータを使った判断が可能だ。

 では、サッカーのように途中で度々中断せず、ピッチ上にいる選手全員が激しく動き回るスポーツで、リアルタイムのデータ収集と分析は可能だろうか?

 独ブンデスリーガのTSG1899ホフェンハイムは既にそれを実行している。選手のすね当てやボールそのものにもセンサーを取り付け、練習や試合中に動いた方向、距離やスピードを計測できる。データを収集し、各選手にアバターを割り当てれば、今、目の前で見ていた試合をロールプレイングゲームの画面を見るかのように再現することさえ可能だ。

 3D画面を見ながら「あの局面では、相手DFとの距離の取り方が中途半端だったために、出したパスを奪われた」「君の試合中の最高速は1カ月前より5%改善した」というようなアドバイスや、「攻撃だけでなく、守備も献身的だった」という評価も、データに基づいてすることができる。今やブンデスリーガやJリーグにおいても試合中の様々なデータが収集・公開されるようになった。

「予測」と「リモート」で2025年に11兆ドル市場に

 マッキンゼーは、昨年6月に公表したレポート「The Internet of Things : Mapping The Value beyond The Hype」の中で、IoT関連市場は2025年までに11兆ドルを超える可能性があることを明らかにした。[図1]はその全体像を示したものだ。実は、最も恩恵を受けるのは工場のオペレーションであるし、上記に示したようなB2C市場よりもB2B市場の方が倍の価値を生み出す可能性がある。

[図1]
[図1]
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