それゆえ、「若者的」に見える新たなテクノロジーやフィンテックに、まともに向き合ってこなかった金融機関が多い。また、さらに高まる個人情報保護の問題やネットバンキングにおけるセキュリティ問題などもある中で、技術を使った金融を「危ないもの」として捉える傾向もある。

 確かに、フィンテック先進国の欧米では、起業家に加え、トップクラスの技術者、金融当局、金融機関が一体となって迅速に事業化を進めるため、出来上がったサービスの質・安心感は高い。日本においても、関連分野のトップクラスの人材が国・金融機関と一体となり、フィンテックを推進すべきだ。起業家だけで頑張るのは限界がある。

 折しも、2015年12月16日に出された金融審議会(首相の諮問機関)の「金融グループをめぐる制度のあり方に関するワーキング・グループ」報告書が、金融グループがIT(情報技術)ベンチャーに出資する際は、従来の一律の出資規制を緩和して、個別認可とする方針を打ち出した。今後、こうした制度面での整備が進むことで、金融機関側の自助努力が求められた結果、積極的に取り組む金融機関とそうでない金融機関との差が拡大する恐れがある。

「銀行」を意識しない近未来はすぐそこ

 [図表5]は、我々が描く近未来のある会社員の1日だ。それぞれの機能はすべて現時点で実現されており、もちろんモバイルでも可能だ。もしかしたら、①から⑩までの作業は、銀行の窓口に行くこともなく、朝の通勤電車内の1時間で済んでしまうかもしれない。

 それも、何かのサービスに登録している一つのIDだけを使い、口座番号やクレジットカード番号を一度も入力することなく、手続きが完了している可能性さえある。それだけでなく、口座を開設した「銀行」は、従来、目にしている銀行ではないかもしれないのだ。

 様々な分野でのデジタル化がユーザーにもたらす恩恵は、常に場所や時間の制約を取り払い、選択肢を増やすという、ストレスフリーな環境だ(もちろん、デジタルゆえのセキュリティの脅威は存在するし、高まる可能性はある)。だが、大規模な支店網、大量の人員を抱える従来型の金融機関にとっては、ストレスが増す時代になることは間違いない。