これを、銀行業界向けに翻訳し直せば、「預金口座を持っているからといって、給与振り込みや公共料金の支払い、ローンもその銀行に頼むとは限らない。便利でお得なサービスがあれば、サービス別に使い分け、最終的には口座ごとそちらに移ることさえある」ということになる。

 自前の金融サービスを持たないフィンテック企業が、既存金融機関のサービスを集約する様子は、ポータルサイトなどが多くの新聞社やテレビ局のニュースを買い、あるいは彼らのサイトへトラフィックを流す見返りに、自社サイトのユーザーの満足度を高めて、ビジネスの成功に結びつけようとしている様と瓜二つだ。

重い腰を上げようとしている国内銀行

 では、既存金融機関はただ手をこまねいているだけだろうか?[図表3]は、欧米の金融機関がいかに対応を進めているかを、マッキンゼーが調査、分析した結果を整理したものだ。

 欧米の先進的な銀行は、すでに行内の体制作りは終え、自前での開発の道も残しつつ、フィンテック企業による破壊的なサービスが出現した際の対応を定めている。銀行だけでなく、ベンチャー企業、規制当局や法律家などの専門家がプレーヤーとして関わるため、網羅的かつ懐が深い内容だ。

 [図表4]は、マッキンゼーが調査した欧米銀行の戦略オプションの一覧だ。「模倣、買収、サプライヤとして利用、提携、反撃、無視、ビジネスから撤退」と、フィンテック企業による新サービスのインパクト、自身の戦略的重点分野やケーパビリティに応じて、是々非々で対応する構えを整えている。

 翻って、日本の金融機関はどうだろうか?残念ながら、我々の知る限り、[図表3]の「スピード1」の段階にさえ達していない企業がほとんどだ。背景には、日本の多くの金融機関が高齢者や退職者層をメインの顧客層として位置付けており(実際の収益上も最重要のセグメント)、また、住宅ローンを利用するような中齢消費層は給与振り込み口座で「がっちり」抑えてきた、という事情がある。