パートにも「積極派」と「そこそこ派」

 2016年6月、主婦向けの仕事斡旋に力を入れるビースタイルが、既婚女性616人を対象に「扶養枠で働く」意識に関する調査を行ったところ、社会保険料負担が130万円以上から106万円以上に引き下げられたら「今よりも年収を下げて扶養枠内に収める」と答えた人が4割に上った。「今よりも年収を上げて扶養枠を外す」という人が2割、「もともと扶養枠は外しているので変わらない」という3割弱を加えると約半数は積極派。「積極派」と「そこそこ派」にほぼ二分される格好だ。

 「今より年収を下げて扶養枠内に収める」と、あくまで「扶養枠」にこだわる「そこそこ派」にその理由を聞くと、「無理のない範囲で両立をしたいから」という理由が6割を超える。また「収入を増やしたくても配偶者の家事育児の協力が望めないから」、「収入を増やしたくても子どもを預けられない」と答えた人もそれぞれ2割前後いる。家庭や社会環境の壁があるため仕事を制限せざるを得ないという悩みが浮かんでくる。

 自由回答を見ると、「扶養を超えて稼いだ分、保険料でとられてしまうなら働き損」とドライに割り切る人もいれば、「高収入を望めるような資格などないから」と自信のなさをのぞかせる人もいる。一方「今の職場では時間や日数を増やすことができない」「扶養枠を超えたくても会社がそうはさせない」と訴える声もある。企業側が社会保険料の負担増を嫌い、従業員に対して扶養枠を超えて働かないよう調整を求めるところもあるのだ。

 中には、育児も家事も、そして地域の仕事も女性に負わせてこれ以上働けというのかという怒りの声も聞かれる。

「収入を増やしたくても働く時間は限られ、家庭のことも地域のことも自分がしなくてはならない。これ以上、働く女性にどうしろと?」

「希望は正社員でがっつり稼ぎたいが、子どもも小さいし、保育所に預けても緊急時に対応するのは自分なので、勤務先から敬遠される。それに低賃金の地域という地域性も影響している」

「子育て中の人だけではなく親の介護でなかなか働けない人もいるのに、一律に扶養控除の枠を狭めたり、撤廃したりしようとするのは納得がいかない」

「パートは贅沢な働き方になりつつある」

 損するから「扶養枠」、無理なく両立したいから「扶養枠」という人もいれば、やむなく「扶養枠」という人まで、扶養の枠内でパートとして働く既婚女性の心情もさまざまだ。

 冒頭の吉田さんがスタッフ登録する、経理の在宅ワークを斡旋するトューユーの濱崎めぐみ社長によると、スタッフの中には子育てしながら会社勤めをすることに限界を感じて退職、やむなく「扶養枠」で働くことにした女性も少なくないという。「大手企業で短時間勤務をしたものの、周囲からの厳しい視線に耐えられなくなって退職。在宅ワークで扶養の範囲で働く人もいる」。

トューユーの濱崎めぐみ社長

 一方で、ビースタイルの三原邦彦社長は「(既婚女性にとって)パートは贅沢な働き方になりつつある」と指摘する。男性社員の給与が下がり続けるなか、103万円、130万円と扶養の枠内に収めて働くパート主婦は、世帯収入が平均よりも高めだという。本当に経済的に困っている家庭なら、妻もフルタイムで働くことを望むというのだ。

 実際に、ビースタイルの先の調査をみても、世帯年収が高いほうが「扶養の枠内に収める」という希望が多い。2016年10月から社会保険の適応枠が広がることを受けて、もし該当するならどうするかを尋ねたところ、「今よりも年収を下げて扶養枠内に収める」と答えた人は、世帯年収500万円以下だと33.3%のところ、世帯年収700~900万円だと46.6%に膨らむ。世帯年収が高ければ「扶養枠」という働き方を選択することができるともいえる。