奨学生20人は朝晩ミーティングを開き、目標を設定し振り返りを行った

 福岡女子大3年の岡坂明日花さん(21)がサミットに参加したのは、家庭環境で抱いた疑問がきっかけだという。亭主関白の父に反発して敵対的態度をとっていたが、あるときそれでは問題が解決しないのではと思い立つ。ジェンダーの問題をどう解決すればいいのか、また将来自分がリーダーになるとき、どのような心持ちでいればいいのか。こうした問題意識を持って参加した。

 参加したところ意外な発見をした。同じテーブルについた日本企業の女性管理職らと話したところ、「会社の研修として派遣されている」と言う。最初から管理職を目指していたわけでもなく、女性サミットに能動的に参加しようと思ったわけでもない。しかし、「会社で研修を受けるうちに少しずつ意識が変わってきている」というのだ。この言葉には驚いた。「女性のリーダーシップに関心のない人たち、ジェンダーの課題に興味のない人の意識を変えることもできる。そうした人の意識を変えることこそ大切だと気づきました」。この経験をもとに、9月に開かれる福岡国際女性サミットのプレイベントを学生で企画し、ワークショップを通して気づきを促したいと、現在準備を進めている。

 名古屋大学大学院博士課程1年の鬼谷美紀さん(26)は、経済人類学を専攻しており、フィリピンの農漁村に見られる金融行動を人類学的アプローチで研究している。

名古屋大学博士課程で研究を続ける鬼谷美紀さん(26)。フィリピンから来日した社会起業家に英語で深く鋭い質問を投げかけた

 最も心に響いたのは、フィリピンの社会起業家、ECHO Store創業者のパシータ・フアン氏の言葉だった。フィリピン全土から環境に配慮した食品を集めて店舗やオンラインで販売している。「農漁村の貧困層がマーケットに参加できる仕組みをつくることで、貧困削減につなげたい」とフアン氏はいう。この言葉を聞いて「私も社会起業家を目指したい」という思いが沸き起こってきた。自分も何か行動を起こさないといけないという責任感のようなものが芽生え、眠っていたものが呼び覚まされたような感覚を覚えている。

 参加した学生20人の心の中には、何らかの種が確実にまかれていた。

 ナティビダッド氏がインタビューで語っていた言葉が思い起こされた。「たとえ個人でも変革を起こすことができる。私たちアメリカ人女性はそう信じて実際に社会を変えてきた。日本人女性にだってできるはず」

 「社会を変えるために、学生でもできることから始めてみたい」。奨学プログラムに参加した学生たちの間には、早くも変革を起こそうという「さざ波」が広がっている。これも、世界女性サミットが日本で初めて開かれたことの大きな成果といえるだろう。

【変更履歴】 文中後半、20人の大学生が招待された説明で「200人超の中から選抜」としていた表記を「26大学51人」に修正します。 (2017年6月2日 9:00am)