「テクノロジー」をキャリア形成の味方につける

 ほぼすべてのセッションで、議論の遡上に上ったのが「テクノロジ―をいかに味方につけるか」である。

 前述の女性CEOセッションでも、吉田晴乃氏は「シングルマザー、BTジャパン社長、経団連理事、政府委員という4つの肩書をこなしながら、25%ずつではなく400%の成果を出せるのは、デジタルの力があるからこそ。海外出張の機上でビデオ会議もすればEメールも出す。家庭では掃除ロボットを使う。女性がキャリア形成をめざすならテクノロジーを使って生産性を上げるしかない」と語った。

 会場の女子大生が「将来に向けて、どんな技能を身につけるべきですか」と質問すると、登壇した女性CEOほぼ全員が「STEMから始めよ」という答えを返した。STEMとは、Science、Technology、Engineering、Mathematicsの頭文字をとったもので、科学・技術・工学・数学分野を指す。

 SAPアジア・パシフィック・ジャパン代表のアデア・フォックス・マーティン氏は「向こう10年、データは新しい石油になる。この領域の仕事はもっともセクシーな仕事である」と語った。そもそも女性CEOセッションに登壇したパネリスト4人中3人が科学技術関連業界であることを割り引いても、今後STEMの経験・知識がチャンスにつながることは間違いないだろう。

 キャリアアップにおいて味方につけることが大切なのはもちろんのこと、起業する上でもSTEMをいかに取り入れるかが成否のカギとなる。今回の女性サミットにはスピーカーとして若手の起業家も登壇したが、例外なくテクノロジーを駆使しての起業である。中には、20代、30代の日本人女性の起業家の姿もあった。

 米スタンフォード大学に留学中にクラウドファンディングの会社Ready forを立ち上げた米良はるかさんは、インターネットを通じて事業資金を集めるプラットフォームを築いた。沖縄の離島に救急飛行場をつくる、東日本大震災の被災地で子どものための図書館をつくるといった事業立ち上げの後押しをしてきた。

 軒先株式会社CEOの西浦明子さんは、ビルの空きスペースといった、いわば「軒先」を借りて何か事業を始めたい人と、貸したい人をつなぐ仕組みをインターネット上でつくった。いまやユーザー登録は13万人。「空きスペースが日本の未来をつくる」をコンセプトに事業を広げる。

パネラーとして登壇した軒先株式会社の西浦明子さん

 STEMにテーマを絞ったセッションでは、今後の有望性を語る数々のデータが発表された。今や何らかのかたちでSTEMの要素が必要な仕事は71%に上り、2008年から2018年の10年間でSTEM関連の労働者は18%増える見込みという。STEMの労働者は、非STEMに比べると賃金が26%も高いという分析もあり、男女の賃金格差があるなかで女性がもっとSTEM分野に目を向けて就業を目指す必要があるという。

次世代のリーダーを育てる仕組みづくり

 サミットが進むなかで、ひとつ驚いたことがある。それぞれのセッション最後には必ず、会場から質問を募る。まず手を挙げてスタンドマイクに駆け寄り、そして臆することなく英語でしっかりと質問をするのが、日本人の場合はほぼ例外なく女子大生なのだ。

 彼女たちはいったいどこから来ているのか。ほどなくその疑問は解けた。未来のリーダーを育成する奨学プログラムで、全国の大学から20人の女子学生が招待されて参加しているという。英文エッセイで応募した26大学51人から選抜された、先鋭20人である。