今回の東京大会のテーマは、“Beyond Womenomics:Accelerating Access”。「ウーマノミクスを超えて~変化のスピードを上げる」といった意だ。「(女性の経済参画が国の成長につながるという)ウーマノミクスは数字上の理論に過ぎない。女性の経済参加が大切だと言うだけではなく、具体策を共有して、変化のスピードを上げて実現していきたい」と、ナティビダッド氏は狙いを語った。

27年間変わらない課題は「賃金格差」「仕事と私生活の統合」「差別意識」

 世界共通の課題を議論することから、同サミットは「女性版ダボス会議」と呼ばれることもある。しかし、国を超えるテーマを議論するために、なぜ「女性サミット」が必要なのか。

 27年にわたりサミットを率いるナティビダッド氏は、インタビューでこう語る。「たしかに女性の経済参加は進んできた。しかし、世界中でいまだ抱える課題がある。ひとつは、男女の賃金格差。二つ目は仕事と生活の統合、三つ目は、根強い男女差別の意識である」。世界共通の課題を議論しながら、リーダー層から低所得層まで、すべての女性の経済参加の壁を取り除いていく、これが女性サミットの意義なのだ。

 変わらぬ課題は、3日間のセッションの中に縦糸のように織り込まれている。その中のひとつ「給与格差の是正:ベストプラクティス」のセッションでは、法整備や企業の取り組みが紹介された。

 世界約50カ国で事業を展開するインテルでは、1万2000人のMBAホルダーを対象に男女の賃金格差を調査したところ、採用時点ですでに給与に差がある、育児休業で遅れをとる、昇進に違いがあるといった理由から、男女で1万6000ドル近い差が開いている事態が浮かんできた。女性の場合、評価されても昇進で遅れをとる、昇進が遅れても異議申し立てをしないことも分かった。そこで女性の昇進を手助けするスポンサーシッププログラムの中で、賃上げをしてほしいと上司と交渉するのを手助けをしているという。

 ドイツの家庭・高齢者・女性・青少年省の政務次官からは、従業員200人以上の企業を対象に、要求されれば賃金体系の開示をしなければならない「賃金開示法」といった法案がこの3月に議会を通ったと報告された。ドイツでは男女の賃金格差は2016年時点で21%ほどと先進国の中でも比較的小さい。それでも問題は根深いとして原因を探ったところ、女性のキャリアの選択肢が限られている、労使交渉ができない中小企業に勤務する人が多い、出産を機に家庭優先の働き方となっている、出産後はパートで戻る人が多いといった要因が浮かんできたという。ただし「格差の6%は全く説明がつかなかった」として、今回の法律制定に至った。

 翻って日本の賃金を男女でみると、フルタイム労働者(非正規含む)の男性を100とすると、女性は73.0(厚生労働省2016年「賃金構造基本統計調査」)。先進国の中でも格差は大きい。サミットで紹介されたような海外のベストプラクティスを参考に、取り組みを進める必要があるだろう。

女性経営者らが、山あり谷ありの人生を率直に語る

 ここからは、サミットの中で印象的だった流れを3つのキーワードで紹介していきたい。「女性のリーダーシップ育成」「テクノロジーとキャリア」「次世代の育成」である。

 サミットでは、女性リーダーの育成が一貫して大きなテーマである。女性はロールモデルが見えないと、上のポジションに就けるというイメージを描きにくい。女性の経営者らはいかにしてキャリアを築いてきたのか、男性中心の組織が多いなかでいかに男性と協調しながら「自分ブランド」を築いてきたのか。グローバルキャリアを切り開いたのか。セッションの中にはこうしたテーマがふんだんに盛り込まれており、参加した女性管理職らが、各国の女性リーダーのスピーチに真剣に聞き入る姿が目についた。

 仕事と私生活をどうバランスをとるのか、上位職をめざしてキャリアを追求するなら、結婚や子育てを諦めなければいけないのか――というテーマは、洋の東西を問わず、そして昔も今も大きな関心事である。

 女性CEOのフォーラムでは、BTジャパン社長で経済団体連合会の理事でもある吉田晴乃氏が、「長年にわたりキャリアに不利になると思い、娘がいることを職場に隠していた。娘が5歳になったとき、母の日に私の絵をかいてプレゼントをしてくれたのに、その日も仕事で一緒に過ごすことができなかった。こうした過ちを皆さんに繰り返してほしくない」と自責の念を込めて語った。