「母親のキャリア形成」という問題は残っている

「母親でありながらキャリアを形成していくのはやはり難しい」(大手ガラス素材メーカー、サンゴバンの人事担当役員クレール・ペディーニさん)
「母親でありながらキャリアを形成していくのはやはり難しい」(大手ガラス素材メーカー、サンゴバンの人事担当役員クレール・ペディーニさん)

 大手ガラス素材メーカー、サンゴバンの人事担当役員クレール・ペディーニさん(50)は、「フランスでは母親でも仕事をするという壁は乗り越えた。しかし今もなお、母親でもキャリアを形成するという問題は残っている」と指摘する。

 クレールさんが今取り組むのが、「キャリアを積み上げていく上でのフレキシビリティを確保すること」だ。サンゴバンでは一般的に32歳から40歳くらいにかけて昇進するが、女性はその時期にちょうど出産が重なり、足踏みしがちだ。しかし、出産適齢期は変えられない。

 そこで「40歳以降でもキャリアをつけられるような昇進昇格の仕組みをつくるべきだ」という。時間・場所にとらわれないフレキシブルな働き方を実現するのはもちろんのこと、キャリア形成のフレキシビリティを実現しないと「母親でもキャリア形成をする」のは難しいというのだ。

 さらに問題の根っこにあるのは、実は子供の有無ではなく、女性が責任ある地位に就こうと思うか否かのメンタリティだという。「男性が組織を引っ張ってきた長い歴史がある。女性がキャリアを積もうと思うと、男性以上の努力が必要だ」と後輩らに発破をかける。

 死角は、他にもある。家族手当の拠出元である「家族手当金庫」が、失業率の上昇と子供の増加で財源が不足し始めたのだ。まずは高所得層から、家族支援の手当は徐々に削られている。

 「家族政策が企業にとって本当にプラスになっているのか、社会としてよい方向に向かっているのか、検証する時期を迎えている」と経済・財政・産業省のマリーさんは指摘する。遡ること30年も前に「働きながら子供を育てる世帯」を支援する仕組みをつくりあげ、出生率の回復と就業率アップを同時に達成したフランス。その後の軌跡、そして光と陰から学べるものは大きい。