長時間労働の環境のまま、子育て中の社員が短時間勤務といったフレキシブルワークを使うと「子育て社員は特別扱いで、私たちはフォローするばかり」という不満が他の社員に広がってしまう。まずは残業を極力なくして、その上でフレキシブルワークを導入すれば、不満も出ない。子育て中の社員も気がねなく制度を使える。仕事をしながらの子育ても難しくないと思えるという好循環が生まれるのだ。

いまだ残る古い慣習を、女性管理職が変えていく

「フランス企業のシステムは、女性の進出が広がる以前とそう大きくは変わっていない」と指摘する国立行政学院(ENA)校長のナタリー・ロワゾさん
「フランス企業のシステムは、女性の進出が広がる以前とそう大きくは変わっていない」と指摘する国立行政学院(ENA)校長のナタリー・ロワゾさん

 フランス企業の光の側面をずいぶんと紹介してきた。そうはいっても「会社のシステムは、女性が働いていなかった時代からさほど変わっていない」と指摘するのは、国立行政学院(ENA)校長のナタリー・ロワゾさんだ。一昨年『すべてを選びない』という本を著し、仕事も子育ても諦めるなというメッセージを送り話題を呼んだ。外務省からエリート養成校の校長へ、時には「子育てのために諦めたポストもある」というものの、4人の子供を育てながらキャリア街道を歩んできた。

 これまで力の及ぶ範囲で「(男性中心の職場の)悪い習慣は変えてきた」という。例えば朝食会は断る。子供と朝食をとり、学校に送っていきながらおしゃべりをするのが大切な時間だからだ。会議は2時間など論外。45分きっかりに収める。19時過ぎの会議も禁止。「19時以降は、子供がいる人もいない人も、自分に栄養を与える大切な時間だ」と説く。

3人の男の子を育てながら働くルノーのローランス・エルツベルグさん
3人の男の子を育てながら働くルノーのローランス・エルツベルグさん

 ルノーで商業小型車のマーケティング・ディレクターを務めながら、3人の男の子を育てるローランス・エルツベルグさん(45)もまた「18時半には退社する」と職場で宣言している。先日、遅くまでかかる会議があったときは、冒頭に話をして途中で会議を抜けたという。「19時には帰宅して子供と夕食のテーブルにつく」ことが最優先だからだ。「部下もみな理解してくれている」ときっぱり説明したところで、傍らの広報担当者が「でも15年前だと、そうしたことは出来なかった。やはり改革が必要だった」と小声で付け加えた。

 ルノーは日産自動車と同様、CEOのカルロス・ゴーン氏の強力なリーダーシップのもと、女性活躍を進めており、女性管理職比率は既に18%に達し、役員に占める割合も26%に及ぶ。ローランスさんのような子育て中の女性管理職が増えることで、企業風土も変わっていくのだろう。

産み時については「全く考えなかった」

 取材を通して、日本との彼我の差を感じたことがある。子育てをする女性社員に「子供を2人、3人と持ちながら仕事を続けることに不安はなかったか」と尋ねたところ、全員、間髪をいれず「ノン」と答えたことだ。

 もうひとつ、重ねて質問をした。「仕事の状況も考慮して、産み時を考えたか」というもの。これも9割方「全く考えなかった。自然の流れに任せた」という答えが返ってきた。「子供を産んだら今の仕事が続けられないのではないか」と産み時を考えて立ち止まってしまう日本の女性に比べると、何という違いだろう。

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