何が「合理的」な処遇差で、何が「不合理」なのか

 現在も議論が進む「働き方改革実現会議」には、同行の人事担当役員も参加している。ここでの議論も踏まえて、昨年末には「同一労働同一賃金」の政府ガイドライン案が示された(図3)。基本給、賞与・手当、福利厚生、教育訓練・安全管理の4分野にわたり、正規と非正規の従業員の間でその差が合理的と認められるか否かの指針を示すものだ。

 このガイドラインをみると、欧州の同一労働同一賃金の「運用方法」をモデルとしていることがうかがえる。東京大学の水町勇一郎教授は、『非正規雇用改革』(日本評論社)のなかで、欧州の事例をこう解説する。同じ仕事をしているからといって、賃金をまったく同じにすることは、キャリアコースの違いなどから実際には難しい。そこで手当や福利厚生も含めて同一労働同一賃金に近づけるという運用がなされている。欧州の先例もふまえ「均衡待遇の実現に向けては、賃金のみならず待遇一般を対象とする必要がある」という。

 昨年末に開かれた働き方改革実現会議では、人事・雇用の専門家、そして労使の間でも、こうした考え方で概ね一致している。日本政府のガイドライン案は、この議論を踏まえて策定されたものだ。

 2011年に厚生労働省が行った有期労働契約に関する調査を見ると、正社員と有期雇用者の間には、家族手当、住宅手当、また福利厚生などで大きな差がある(図4)。基本給以外の手当についても、その差に合理性があるかを問い直す必要がある。

 そうした視点で、図3の政府ガイドライン案を今一度見てみよう。

 賞与では「同じ貢献なら同一の額を支給すること」とされ、役職手当や時間外手当の割り増し率、通勤手当や単身赴任手当についても同一とするようにと示された。ただし、家族手当や住宅手当については明記されていない。賞与に関しては踏み込んだ指針となっており、役職手当や時間外手当の割り増しについても、均衡待遇への一歩となるだろう。

 教育訓練はどうか。職務内容が同じなら、正社員と非正規従業員の教育訓練の機会も同じとすることとされた。もし実現すれば、均衡待遇に近づける後押しとなるはずだ。

 もっとも注目される「基本給」については、①職業経験や能力、②業績・成果、③勤続年数――という3つの評価基準が提示された。ただしキャリアコースなどで差をつけることは認められるという。このあたりは企業によって解釈・運用が分かれそうだ。合理的な差とは何か、何が不合理な差なのか、さらなる議論が必要だろう。

 今後は、こうした処遇差について企業に説明責任を求めるか否かも焦点となる。実効性をいかに担保するかが重要だ。