「同一労働同一賃金は、結果に過ぎない。目的ではない」
「同一労働同一賃金は、結果に過ぎないのです。正規と非正規の処遇差をなくすことを目的に導入したわけではありません」
開口一番、人事担当は少し困惑した表情でこう言った。2003年、経営破たんした同行は、社員の大量退職という事態を迎え、それまでの男性総合職中心の働き方を見直さざるを得なくなった。性別・年齢・雇用形態に関係なく、すべての社員が活躍するような「ダイバーシティマネジメント」を進めないと、会社が回らなくなったのだ。
年齢が上がるとともに給料が上がる年功給の仕組みを廃し、「職能制度」から「職務等級制度」へと切り替えた。正社員、パートタイマー社員に共通の職務等級を導入し、同じ職務グレードならば、職務給(基本給)を時給換算で同額とした。その結果、「同一労働同一賃金」になったというのだ。
実は、りそな銀行の導入経緯は、欧州のそれと近い。日本総合研究所の調査部長である山田久氏は、著書『同一労働同一賃金の衝撃』(日本経済新聞出版社刊)のなかで、日本においては正規と非正規の格差是正のために導入論議がなされているが、欧州では人権保障の概念の下、性別や人種間の格差是正、社会のダイバーシティの尊重により活力を高めることに目的があったと説く。「『同一労働同一賃金』の真の意義は、働くすべての人がその属性にかかわらず、それぞれの持つ個性を生かして能力を発揮することを促すための、報酬面で有効な基準である」とする。
経営破たんを受けて、性別・年齢関係なくすべての人に活躍してもらう必要に迫られたりそな銀行もまた、ダイバーシティ尊重のなかで「同一労働同一賃金」を実現したことになる。
りそな銀行の人事制度は、図1、図2の通り、現在は大きく3つのコースに分かれる。
無期雇用の正社員も、パートナー社員(パートタイム社員)も、同じ職務グレードで仕事をしていれば、時給は同じである。この場合のパートタイム社員はフルタイムを前提に働く人を指す。この他、扶養の枠内で就業調整をする人もいるが、その場合は時給が低くなる。これに2016年4月に「スマート社員」が加わった。やはり、時間あたりの職務給(基本給)は同じだが、残業ゼロか、職務限定かを選ぶことができる。出産・育児や介護といったライフイベントに合わせて、働き方を変えたいという社員が増えたことに対応するものだ。人数でみると、社員が約6割、パートナー社員が約4割、始まったばかりのスマート社員は現在200人ほどといった割合だ。
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