第一に英語の分科会を立ち上げたのは、わが社は海外の顧客も多く、資料を翻訳したり、会議で通訳を入れたりすることで、業務が非効率になっているためです。すべての社員が英語で仕事ができるようになると、効率化が進むと考えています。

「働き方改革」の着手により、残業時間が半減した日本電産

 第二の委員会は、管理職のマネジメント力向上。上司が忙しすぎると、部下がどのように仕事を進めているか分からなくなります。まずは1日のはじめに、その日にやることを把握します。そして最後に1日のアウトプットを把握することを徹底する方針です。

 経営とはマイクロマネジメントである、と永守会長は常々言っています。通常、マイクロマネジメントとは否定的な意味合いで使われますが、この場合は、肯定的な意味合いです。たとえばオーケストラの指揮者は、それぞれのパートがどのタイミングでどのくらいの音量で、どのような音色で音楽を奏でるのかをすべて把握しています。経営者も管理職も、指揮者と同じだというのです。部下がいつ何をするのか、把握した上で動かす役割を担うというのです。

すでに2015年から取り組みをはじめ、残業が減り始めていると聞きます。どのような取り組みをされたのですか。

石井:2015年下期から、全社平均の残業は月29時間から16時間にまで減りました。約半減したことになります。

 まず「残業を減らそう」という積極的な声がけ、これで3割ほど減りました。残り2割は、会議を減らしたことが大きいようです。会議に出席する人を減らす、時間を減らすことを徹底しました。1時間の会議を45分として、日中、上司が会議でほとんど席にいないという状況をなくしたのです。上司が会議の合間に15分でも席に戻れば、部下の相談を受けることができる。これで仕事がかなり流れるようになりました。

生産性の向上を目指す上で、時間当たり生産性をどう測るのでしょうか。生産現場と違い、事務部門では難しいかと思います。

石井:難しいのは事実です。時間当たりの労働生産性の定義をいうなら、時間あたりの創造的付加価値。「付加価値額」を「労働投入量(労働者数×労働時間)」で割ったものです。これを測るには、先ほど言ったマネジメント力、部下のアウトプットを把握する力を上げていくしかない。業務フローの改革も必要でしょう。

残業代が減った分は、賞与や教育費で還元する

社員にとっては、残業が減ると、残業代が減ってしまうという心配があります。これには、どう対処するのでしょうか。

石井:実は、社員が直接、永守会長に声を届ける仕組みがあります。そのなかには「残業代が減ると、住宅ローンが返せない」という声があったのは事実です。会長は「収入が減らないようにするから、安心して残業を減らしてくれ」と返しました。

 残業代が減ったことで浮いた人件費の半分は、賞与に載せています。残り半分は、社員への教育投資という形で還元します。英語、マネジメント、IT、技術など、社内施設で勤務時間終了後に数々の研修講座を開いています。むろん社員が率先して研修を受けないことには還元されませんが。

 2016年の冬の賞与では、残業代が減った分の補てんとして、一人当たり7万円ほど上乗せされました。ただし、今後はベースの給与に入れるべきでしょう。今年から給与に組み込む形での改定を検討しています。