ルールを守れないと人事面談もあり。場合によっては異動も

 その結果、どうなったか。まずは、就業規則に組み込んだ必達目標である(1)の「8時間インターバル」。仕事の継続性、連続性が必要な場合、また突発的な仕事に対応しないといけない場合は認めるという「例外規定」はあるものの、「8時間インターバル」が守れない人が対象社員約9600人のうち月100人ほどいるという。ただし、いずれも「常習」ではなく月1回程度で、かつ翌日は健康配慮のために早帰りか休日とするといった対応がほぼ100%達成されているとか。

 (2)の「月半分以上の11時間インターバル」はどうか。対象となる全社員約1万4000人のうち月20~30人は、このルールに抵触して健康管理の対象者となる。まずは、セルフチェックによる問診票を提出。ここで「要確認」となった人は、人事部のスタッフと面談、さらには産業医の面談に進む人もいる。人事との面談では、ケースバイケースの判断がなされる。「2、3日有給休暇を取るように」「向こう3カ月残業禁止」などと人事担当が申し渡すこともある。直属上司と相談したり、仕事の負荷を軽減したり、場合によっては異動とすることもある。

 「見えにくい過重労働が『見える化』化した。働く側は、より健康に気を付けて仕事をするようになった」と、人事担当は健康管理面での効果を強調する。そもそもインターバル規制の導入は「社員の健康管理のため」だったという。

EUのインターバル規制の目的は残業削減ではない

 日本がモデルとするEUのインターバル規制もまた、実は残業削減ではなく、従業員の健康管理を目的とするものだ。「その制定根拠は、労働者の健康と安全を保護すべきとのEC条約第137号」にあると、労働政策研究・研修機構の主席統括研究員の濱口桂一郎氏は解説する。

 従来の日本型企業では、猛烈に頑張る社員は睡眠時間を削ってでも走り続けるもの――こうした神話がまかり通っていた。しかし、それがいかに健康を害するものか、いかに生産性を下げる働き方であるかというレポートがいま次々に出されている。

 そのひとつが『スリープ・レボリューション』(日経BP社刊)。インターネットメディア「ハフィントンポスト」の創始者で知られるアリアナ・ハフィントン氏は、仕事と子育てに睡眠を削ってフル回転して、ついには倒れて頬骨を折る大けがを負うに至ったことを吐露する。自身の経験から、睡眠不足がいかに心身の健康を蝕み、そして職場の生産性にもマイナスとなるか、さまざまなデータで説いている。

 睡眠不足と、うつ病との関連性は、先の電通の女性社員の過重労働による自殺でも知られている通りだ。さらに、睡眠不足は心臓疾患、脳血管障害、免疫の低下など身体にさまざまなダメージをもたらす。脳の働きに及ぼすマイナス面も大きい。

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