仮に男性だったとしても、引き抜いていたかもしれない

ところで、鎌田さんを引き抜いたのは女性だからですか。つまり女性幹部を増やす意図もあったのでしょうか。

松本:仮に男性だったとしても、あれだけの実績があれば引き抜いていたかもしれない。しかし、女性の幹部を増やしたいという会社の方向性に合っていたことは事実です。女性だから、より引っ張りたいということはあったと思います。

 男女半々の世の中で、社員も管理職も役員も半分は女性というのが、目指すべきゴールです。そのためのマイルストーンが30%。遅くとも2020年までにどこから切っても女性が30%となるようにするのが目標です。執行役員の比率は、今年の春に女性比率30%になります。しかし上級執行役員は女性ゼロだった。社長や人事とも相談して、鎌田さんを上級執行役員として迎えることにしたのは、こうした事情もあります。

 とにかく女性活躍を進めないと、会社は強くならない。それには議論の余地がない。そのためにはこれから5年から7年くらい、少し力づくでも進めないといけません。地位が人をつくるということもあります。(引き上げた女性に)弱点は少しあるかもしれないけど、まず30%を達成してから、問題を見直せばいい。

鎌田さんを招いて、効果を感じていますか。

松本:まず空気が変わりました。鎌田さんは新しいものを探して、社外に、そして海外でもすぐに飛び出していく。(全国の支社工場を経営者が回る)タウンホールミーティングでも、鎌田さんはよく喋る。「えっこんな人がいるんだ」と社員はびっくりしている。いい刺激になっています。

 ただし、鎌田さんは「外人間」なので、まだ社外での評判のほうが高い。メディアで紹介されることも多く、外に発信する広報効果も出てきていいます。それを社内の人間が見て、自分の会社の価値を再認識すればいいのです。

「任せます」と言ったほうが、本人も元気になる

「鎌田さんはよく喋る。『えっこんな人がいるんだ』と社員はびっくりしている。いい刺激になっています」(撮影:大高和康)
「鎌田さんはよく喋る。『えっこんな人がいるんだ』と社員はびっくりしている。いい刺激になっています」(撮影:大高和康)

鎌田さんを引き抜いたからには、松本会長が後ろ楯となっているのですか。社内人脈が不足していることも、壁になるかと思います。

松本:後ろ楯なんて、必要ないでしょう。もちろん困ったことがあれば、何時でも相談にはのりますが。それよりも大切なのは、権限委譲をすること。後ろ楯などといってあれこれ口を出すよりも、「任せます」と言ったほうが、任されたほうも元気になる。元気になれば成長するものです。

 それに社内人脈なんて、たいしたものではありません。社内の飲み会など必要ないし、ホウレンソウという言葉も嫌いです。社内人脈などなくても、仕事に応じて必要な人を探せばいいのです。それよりも、社外人脈のほうがはるかに大事だし、価値があります。その点でも、鎌田さんの社外人脈は半端ではありません。

鎌田さん自身は、「モタモタして結果が出なければクビになる」と覚悟を決めて新規ビジネスに取り組んでいるそうです。

松本:伊藤社長が鎌田さんに何を求めたのか、本人が何にコミットメントしたのか、私は知りません。私には人事権はありませんから。社内のイントラネットにはコントラクトが公開されているので、鎌田さんのC&A(コミットメント&アカウンタビリティ)は社員全員見ることができますが、私はチェックしていませんね。

 会社でも、相撲の世界と同じように結果次第で上がることもあれば、下がることもある、それが当たり前にならないとおかしいと思います。今場所優勝した琴奨菊が、これから横綱になるのか、幕下に落ちるのか、すべては結果次第。そういう意味では、結果次第では上級執行役員の上もあれば、下もあるということです。