女性幹部のヘッドハンティングが増えている。「2020年までに意思決定層に占める女性の割合を30%にする」という202030の目標に向け各社女性幹部登用に力を入れるものの、社内で人材が育っていないからだ。カルビーもまた昨年2月に、JR東日本から駅ナカの生みの親として知られる鎌田由美子さんを上級執行役員として迎えた。

 実は、ヘッドハンティングに動いたのは、松本晃会長。なぜ経営トップ自ら、女性幹部引き抜きに動いたのか。鎌田さんに期待するものは何か。松本晃会長に疑問をぶつけてみた。

昨年、JR東日本で駅ナカを成功させた鎌田由美子さんを、上級執行役員として迎えて話題になりました。ヘッドハンティング会社を介さず、松本会長自ら引き抜きに動いたと伺いました。

松本会長(以下、敬称略):大宮駅近くのホテルの喫茶店で、鎌田由美子さんに私が直接会いました。師走の寒い日でしたね。「カルビーは面白い会社です。よかったら来てもらえませんか」と告げました。

 ヘッドハンティングで経営トップが動くのは、当たり前です。野球のドラフトでも、監督自ら出向いて一緒にやろうと手を握るから、指名された球児は心動かされる。人事任せにしていては上手くいかない。企業で最も大事なのは人材、「会社は人なり」です。そこで経営者が最大限の努力をするのは当たり前でしょう。

松本会長がCEOに就任後、生え抜きを含めて5人の女性執行役員が誕生、この春にもう一人加わる(撮影:大高和康)。
松本会長がCEOに就任後、生え抜きを含めて5人の女性執行役員が誕生、この春にもう一人加わる(撮影:大高和康)。

なぜ、鎌田さんを引き抜こうと思ったのですか。

松本:カルビーが持続的成長を続けるには、サムシング・ニュー(何か新しいもの)が必要です。それには2つある。1つは、新しい商品、もう1つは新しいビジネスです。

 新しい商品は社内からでも生まれるが、新しいビジネスは、新しい考え方、新しいやり方で新事業を成功させたことがある人がいないと上手くいかない。社内の人材はどうしても金太郎飴になりがち。社外から人材を招いて新たな風を取り込んだほうが、新しいチャレンジができる。

 鎌田さんには、駅ナカという成功のキャリアがあります。誰も思いつかなかった駅ナカというものを考え出して、駅を活性化してしまったのは、すごいと思う。私は結果主義なので、たいへんリスペクトしています。歌手でも100万枚CDを売った人はすごいし、ラグビーでも南アフリカに一勝したのはすごいこと。何かをしでかした人は偉いと思います。

 鎌田さんには、駅ナカの経験を生かして、新しいものをゼロから生み出してほしい。カルビーの将来の核になるような事業をつくってくれるといいですね。

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