働き方改革とは「コミュニケーション改革」

 働き方改革とは「コミュニケーション改革」でもある。取材を重ねるうちに、つくづくそう思うに至った。

 目の前の部下全員がフルタイム勤務で残業OKという時代は終わった。時間も場所も制約されない働き方を実現する、そしてテレワークなどで目の前にいない部下を評価するには、これまでのコミュニケーションの手法ではたちゆかない。社員全員がオフィスにいることを前提とした従来のコミュニケーションの発想を切り替える必要がある。

 事例をもとに改めて、そのポイントを5つほどにまとめてみた。

1.仕事を「見える化」して、情報を共有する
2.達成目標を明確にしてコミットメントする
3.簡潔に業務を報告するルールをつくる
4.安心して相談できる、信頼できるチームをつくる
5.場所を超えたコミュニケーションを可能にするICT環境を使いこなす

 こうまとめてみると、当たりまえのように感じるかもしれないが、すべてを実行するのはなかなかむずかしい。何しろこれまでは阿吽の呼吸で、いざとなればチーム一丸となりオフィスに張り付いて残業をしてでも目標を達成するのが、日本企業の働き方だったから。まずは発想を切り替える必要があるのは、管理職である。

 それだけではなく、部下の側も、「察してほしい」と座して待つのではなく、上司と積極的にコミュニケーションをとる姿勢が必要だろう。トヨタファイナンスやユニリーバの部下は、その好例だ。

 あるシステム会社に勤める女性SEは、ことあるごとに多忙な上司をつかまえては「5分ください」と相談をもちかけた。子供を2人育てながら、3人目の子供が欲しいと思っていた彼女は、「3人目を出産すると数年はフルタイム勤務ができなくなる。今のうちに残業ありのフルタイム勤務の感覚を体で覚えておきたいので、いったん短時間勤務からフルタイム勤務に戻したい」と、ライフプランも見据えながら働き方の切り替えを相談してきた。夫との家事育児の分担態勢も整えて、少しずつ自信を得て、「3人目いこうと思います!」と上司に宣言。めでたく実行することができたという。

 ワークライフバランスの個別の事情は、管理職にとっては「言ってもらわないと分からない」。コミュニケーションの発想転換が必要なのは、部下もまた同様だ。働き方改革を成功させるには、上司も部下も「対話力」を磨くことが大きなカギとなる。

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