仕事の「見える化」が、周りの社員の納得感を高める

 ユニリーバの事例をみて「外資系企業だし、うちには関係ないな」と思ったとしたら、ちょっと待ってほしい。育児のために短時間勤務をとる社員が急増している。介護を担う社員も増えている。あらゆる企業で多様な働き方をする社員が増えており、まさに今、どの企業でも「働き方改革」が急務である。

 名古屋に本社を置くトヨタファイナンスに、社員間のコミュニケーションを円滑に進め、時間制限のある社員のやる気も引き出すことで知られる「イクボス」男性管理職がいると聞き、名古屋のオフィス街、伏見に訪ねてみた。

 カスタマーサービス推進部のグループマネージャー丹羽直樹さん(46歳)が、その人だ。カードを保有する顧客や販売店からの電話を受けるコールセンターと同じビルに入り、カスタマーサービスの企画や充実を図る部署で、16人の部下のうち1人が育児休業中で3人が短時間勤務をしているという。つまり4人にひとりはフルタイム社員でないことになる。

打ち合わせをするトヨタファイナンスの丹羽さん(右)と女性社員
打ち合わせをするトヨタファイナンスの丹羽さん(右)と女性社員

 さまざまな働き方の人が混在するとき、最初にすべきは、働き方、そして業務の「見える化」だという。6時間勤務なのか、7時間勤務なのか、部内はもちろん他部署の人にも情報共有のスケジューラーなどで働き方を宣言する。部内ではどんな仕事を担当しているかを明らかにする。「あの人、短時間勤務だけど何をしているのか」と疑心暗鬼にならないようにするのだ。

 「誰が、どのくらいの難易度の仕事をどれだけしているか」をチーム内で共有しているため、短時間勤務のまま昇進昇格しても、周りは違和感を抱かない。子育てのために7時間勤務を続ける近藤由果さん(44歳)もまた、地域限定総合職に転換したのち、他部署のマネジャーとの調整が必要な重要案件を任され、短時間勤務を続けながら主任に昇格した。同僚らは、それを当然と受け止めたという。短時間勤務者に昇進昇格の機会を与えて、さらにモチベーションを高めるには、周りの社員の「納得感」が大事になる。そのためにも仕事の「見える化」が必要なのだ。

 フルタイム勤務者と短時間勤務者が混在する職場では、時にはフルタイム勤務者がカバーをすることになるが、目の前の状況に不満を抱かないようにするには「中長期の目標を職場で共有することが大切だ」という。そのためのツールとして丹羽さんが活用するのが、「ドリームマップ」である。

 3年先にはどんな部署でありたいか。チーム内でリラックスして意見交換をしながら、写真コラージュなどで表現するものだ。オフィスの壁には、皆で作成した3年先の目標をビジュアル化したドリームマップが貼られてあった。目線を少し先におくことで、「自分もいつかカバーしてもらうときがくるだろう。お互いさまだ」という心情になるという。

 傍目には、完璧なイクボスに映る丹羽さんだが、常に「(部下が)本音を言っているかどうか。状況をくみ取れているか」と自問自答している。子育てや介護など家庭の状況が変わっても部下からはなかなか切り出せないもの。任せた仕事に不満を抱えてはいないか。そうした本音を引き出すために、丹羽さんもまた「安心」して話ができる環境づくりを心掛けている。

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