熟年層がターゲット、効果的なPR活動でブランド認知に成功

六花亭のメセナ活動により2007年中札内村に開園した「六花の森」。(左) 丘の上のモニュメント「考える人(ロダンから)」彫刻家、坂東優作(右) 「十勝六花」オオバナノエンレイソウの白い花と蝦夷立金花の黄色い花

 北海道ガーデン街道構想については、十勝エリアのガーデンからはもっとゆっくりやればいいじゃないかという声も上がりました。しかし北海道ガーデンの営業は主に春から秋にかけての半年間。翌シーズンに向けて準備するにはどうしてもその時期に動く必要がありました。林さんはなんとか十勝のガーデンの合意を得て設立にこぎつけます。この時期、すでに協議会の活動資金を得るため、使えそうな補助金を探し出していました。当初、自治体や観光協会、商工会議所などからの協力は得られず、活動資金の調達は自ら行わなくてはならなかったのです。

 そこでまず手始めに地元で簡単に取れる50万円の補助金を獲得、それを実績として狙っていた3年で1000万円が得られる補助金の申請を行い、その後、事業プレゼンで見事に勝ち取りました。このスピードと行動力こそ自分の強みだと林さんは言いますが、いや凄すぎです。

 そうして資金を得て協議会が動き出すと、1年目にして参加ガーデンや沿線地域では目に見えて成果が表れます。十勝エリアにある紫竹ガーデンの入園者数は前年の9万人から12万人へ、1.3倍へ急増。従来のパックツアー利用者は価格重視で有名観光地と温泉を駆け足で回るだけで地元にお金が落ちることが少なかったのに対し、ガーデン街道の場合、沿線で2泊以上する例が増え、地域で評判のレストランでは従来の観光客とは異なる熟年層のカップルの姿が目につくようになったといいます。

 これはツアーを組む旅行会社がお金と時間に余裕のある50~70代の女性をターゲットとしたためです。1年目には50~70代の女性3人組の参加が最も多くなりましたが、2年目はその女性たちが今度は夫を連れて訪れ、レンタカーで沿線を旅する姿が多く見られたといいます。こうしたリピーターの存在も北海道ガーデン街道の強みの一つです。

 1年目に関していえば、ガーデン街道というコンセプトについて大手旅行代理店にはなかなか理解してもらえなかったのですが、カルチャー系のツアーを得意とする1社がツアーを組んでくれてそこで集客が見込めることがわかると、2年目以降は大手旅行会社でも多くのツアーが組まれるようになりました。

 また、北海道ガーデン街道を効果的にPRし、かつツアー客を獲得する場としては毎年5月に首都圏で開催される『国際バラとガーデニングショウ』をターゲットとのタッチポイントとして効果的に活用しています。期間中20万人を集めるイベントでパンフレットを配布、興味を持った人はその場で連携する旅行会社のツアーに申し込みができる体制を取っているのです。

 こうしたターゲットを意識し、販促ツールにも工夫が見られます。当初パンフレットは派手な色を使い、ガーデン以外にも様々な地域のアクティビティの情報を盛り込んでいましたが、訪れる人の多くが熟年層であることから次年度以降は落ち着いた色使いに変え、アクティビティよりガーデン周辺で楽しめる食の情報を充実させました。それにより魅力的なパンフレットは旅の思い出にもなり、他の誰かに紹介してもらう際や再来訪を促すことにも役立ちます。

 十勝では長らく、独自の観光ガイドも作成されていませんでしたが、北海道ガーデン街道ができたのを機に林さんは「るるぶ」編集部に働きかけ、十勝帯広ガーデン街道版の出版にこぎつけました。ガイドブックを単に十勝版とするのではなく、人気観光地の富良野や旭川を入れ街道版としたことで観光ルートとしての魅力度や認知度は飛躍的に増し、観光の回遊性が高まりました。今これを手にレンタカーを利用して十勝を訪れる若い世代も増えています。

 こうした取り組みから北海道ガーデン街道の認知度や人気は年々高まっており、「北海道ガーデンショー」が開催された2012年の団体ツアーのチケット販売数は2010年の4.4倍へ伸びました。2011年に代理店の要望で団体チケットを作成して以降、販売枚数は年々増加し、チケットの売上高は2011年の1500万円から、現在7000万円近くに伸びています。こうしたことから協議会では三年目から補助金に頼らない自立した経営を確保、充実した活動ができる基盤を確立しています。

 協議会の運営に関しては2014年に、新たに上川町の「大雪 森のガーデン」を加えた8つのガーデンの理事により審議、3分の2以上の議決で決定しており、6つのオフィシャルホテルや3カ所の観光協会には議決権はありません。ガーデンのことはあくまでガーデンで議論し決定するというシンプルな意思決定システムで、安易にガーデンを増やすこともしていません。これはブランドを守るために非常に重要なことです。

 協議会には事務局を置き、旅行代理店等への営業、広報やメディア対応、クレーム対応などを担当しています。一方、共通チケットやグッズの販売、北海道ガーデン街道の商標の管理などは6つのガーデンが出資した別会社「株式会社北海道ガーデン街道」が行っており、ここで得たチケット売り上げや広告収入から出た利益が協議会の活動資金に充てられています。

 現在、協議会では帯広市や商工会議所、空港などとも連携して事業を進めており、今年度はインバウンド誘致にも積極的に動いています。

 林さんは既に、次を見据えて動き出しています。それが「OUTDOOR VALLEY PROJECT(十勝をアウトドアのアジアの聖地へ)」というアウトドアを活用した新たな地域活性化プロジェクトです。日本を代表するアウトドア企業のスノーピークなどとも連携し、観光レジャー事業者や自治体とともに進めていこうとしており、その動向が注目されます。

旅で見つけたお気に入り(28)「北海道ガーデン街道」おすすめカフェ
北海道ガーデン街道では、各ガーデン内にある魅力的なガーデンカフェも見逃せない楽しみとなっています。今回はその中から3つ、おすすめのカフェ&グルメをご紹介しましょう。
上野ファーム「NAYA Café」7種の野菜のキッシュプレート(950円)、アフォガード(530円)

 「上野ファーム」は、風のガーデンのデザインを手掛けたガ―デナー、上野砂由紀さんが2001年に旭川市にオープンさせた庭園です。コンセプトが異なる9つの庭園を楽しめる上野ファームは自然豊かな田園の中にあり、ファームの裏には上川平野を一望する射的山があり、散策中に野生のキタキツネと遭遇することもあります。築65年を超える古い納屋を改装し、2008年にオープンさせた「NAYA Café」は、7種の野菜のキッシュプレートや季節野菜のファーマーズカレーなどの食事メニューに加え、カフェやデザートメニューも充実しています。

大雪 森のガーデン」ガーデンカフェの眼下には森の花園。カフェの窓には青空に映える白樺が見える。上川発北海道スープカレー(1600円)

 JR旭川駅から特急列車で約40分の上川町には、2014年に北海道ガーデン街道に加わった8つめのガーデン「大雪 森のガーデン」があります。ガーデンカフェでは「上川発北海道スープカレー」など、北海道産の食材を使ったカレーやホットドックなどのメニューが味わえます。カフェの窓からは眼下に「森の花園」とそれを囲むように背の高い白樺の木があり、特に晴れた日は空の青に白樺が映え、それは美しく見えます。百花繚乱のオンシーズンも魅力的ですが、個人的には混雑しないオフシーズンに訪れ、まったりしたい場所です。またここはガーデンに隣接して本格的なガーデンレストラン「フラテッロ・ディ・ミクニ」や宿泊用のコテージ「ヴィラ」もあります。

十勝千年の森」かわいい羊とも触れ合える農の庭にある「ガーデンカフェ ラウラウ」。 季節野菜のパスタとかちマッシュのクリームソース(1100円)

 「十勝千年の森」には農と食と庭のつながりを感じられる「ファームガーデン(農の庭)」があり、野菜やハーブを栽培するキッチンガーデンを備えた「ガーデンカフェ ラウラウ」で本格的なイタリアン、ピッツァやパスタなどが楽しめます。十勝千年の森を運営するのは北海道ホテルのグループ企業で、味も本格派です。また十勝千年の森は国内では珍しく、ヤギの生乳からチーズを作っており、「ゴート ファーム」では飼育されているヤギたちと触れ合うこともできます。

 このほかのガーデンにも個性的なカフェ&グルメがあります。是非8つのそれぞれのガーデンでカフェ巡りも楽しんでください。