旭川・富良野の人気ガーデンが十勝との連携に応じた理由

同名テレビドラマの舞台となった「風のガーデン」、「グリーンハウス」は内部の見学も可能

 林さんの提案を受けた上野さんは新富良野プリンスホテルに林さんを紹介します。たとえ上野さんが提案を受け入れたとしても新富良野プリンスホテルが了解しなければ、話は前には進みません。当然、倉本さんの了承も必要となります。

 新富良野プリンスホテルは1981年から放映された北海道を舞台とした人気TVドラマ「北の国から」で、ホテル内の「ニングルテラス」がドラマに使われるなど撮影が富良野ではじまった頃から、倉本さんと30年以上に渡って交流を持っていました。その後の倉本作品「優しい時間」でもホテルに隣接する森の中にある「珈琲 森の時計」や「Soh's BAR」などがドラマの舞台となってきました。

 また2005年にゴルフ場を閉鎖した際には、倉本さんから昔の森に還してはどうかという提案を受け、2006年、そこに倉本さん主宰の「富良野自然塾」が開講するなど、ホテルの敷地の有効活用についても様々なアドバイスを受けてきました。

 倉本さんがテレビ局から開局50年を記念するドラマの脚本を依頼された際には、当時ゴルフホールの一部に花を植え、カートで回ってお客様に見てもらうサービスを見て、これではダメだと上野さんを紹介されました。倉本さんは旭川のイタリアンレストランで偶然上野さんが手掛けたイングリッシュガーデンを見た娘さんから勧められたということでしたが、新富良野プリンスホテルでは紹介を受け、上野さんを招き、2006年秋にかけてガーデンづくりをスタートしました。

 ただ庭は植栽して完成ではなく、そこから植物が育って完成するものです。倉本さんは庭園を見ないまま脚本を書いていたといいますが、歩いていると姿が隠れるような庭という条件を出し、上野さんはそれに応えて植物が伸びやかに育ち、季節のなかで変化する景色を作り出しました。倉本さんは出来上がっていく庭からインスピレーションを受けたといい、ガーデンは単なるロケ地ではなく、物語に関わる重要な要素となり、倉本作品の聖地のひとつになっています。

 撮影が終了した2008年9月、新富良野プリンスホテルは関係者900名を招き、ガーデンをお披露目したところ好感触を得たため、一般公開の検討を始め、実際、開園すると予想通り多くの人が訪れる人気ガーデンとなりました。

新富良野プリンスホテルの中には(左)『北の国から』の舞台になった「ニングルテラス」。森の中にあるクラフト作品の店やカフェが集まるショッピングエリア、(右)森の奥には『優しい時間』の舞台となった「珈琲 森の時計」がある

 しかし、新富良野プリンスホテルではこれまでの経験からドラマの効果が一時的なものであることは熟知しており、林さんからの提案を受け、ガーデンの評価に「ガーデン街道」という新たな価値がプラスされることで息の長い旅行商品になると考えました。

 また北海道ガーデン街道の構想には他にも魅力的な点がありました。一つは民間で連携してお金を回す仕組みがきちんと組み込まれていたこと。初年度は補助金を活用し販促ツールや共通チケットを作成、翌シーズンに向け旅行会社やメディア、首都圏で20万人を集める人気ガーデニングショーなどで積極的なセールスプロモーションが計画されていました。参加するガーデンに関しても明確な基準が設けられており、単に花を見て回るフラワーテーマパークではなく、優れた造園デザインと園芸技術を有し、北海道らしいガーテンスタイルを持つ民間の有料ガーデン7つに限定することとしていました。

 加えて「オフィシャルホテル」の仕組みを導入。認定するのは森やガーデンを有し、大手旅行会社JTBの顧客満足で90点以上を得るグレードの高いホテルのみとし、そのホテルがPRすることで「北海道ガーデン街道」の認知度とブランド力アップにもつなげる狙いもありました。各エリアにオフィシャルホテルを置いたことでホテル側は率先して営業活動をしてくれますし、オフィシャルホテルがあることで旅行会社はより魅力的な旅行商品の企画ができます。

 このようにガーデン、ホテルとも明確な基準を持ち、玉石混交にしないブランドマネジメントこそ、全国にある「鳴かず飛ばず」の○○街道と最も異なる点です。