2007年に日本初のセグウェイツアーを始めた北海道清水町「十勝千年の森」。草原コースは専任ガイドのもと、30分操作の練習をした後、十勝を一望する千年の丘など、400ha、東京ドーム85個分の敷地を90分、ガイド付きで巡るツアー(画像提供:北海道ガーデン街道)
2007年に日本初のセグウェイツアーを始めた北海道清水町「十勝千年の森」。草原コースは専任ガイドのもと、30分操作の練習をした後、十勝を一望する千年の丘など、400ha、東京ドーム85個分の敷地を90分、ガイド付きで巡るツアー(画像提供:北海道ガーデン街道)

 国の地方創生戦略が基本目標の一つに掲げる「時代に合った地域づくり」。そこでカギとなるのが、既存の行政区画にとらわれない、圏域を超えた都市間の連携「シティ・リージョン」です。

 施策としてはすでに「連携中枢都市圏」や「定住自立圏」などが動き出しておいます。中核・中心となる都市と周辺地域が連携協定を締結、圏域ビジョンを策定し、結びつきやネットワーク、マネジメントの強化を図る構想です。

 三大都市圏以外で中心市の人口を5万人程度以上とする「定住自立圏」の場合、柱とする「生活機能の強化」、「結びつきやネットワークの強化」、「圏域マネジメント能力強化」で様々な政策分野の都市間連携が図られます。制度が導入された2009年から2016年8月までに129市が中心都市宣言を行い、110の定住自立圏の形成が完了しています。

 しかし、地方では核となる中心都市の衰退も加速しています。単なる合理化や次の大合併に向けての布石ではなく、本来の目的である圏域全体の活性化と人口の定住につながるのか、真価が問われるところです。

 肝となるのは活性化を図る戦略、圏域全体で共有できるビジョンの有無です。そこで今回は、250kmを超える広域で都市間連携を実現し、さらに圏域のブランド化に成功した「北海道ガーデン街道」の取り組みから、シティ・リージョンの課題と成功の条件を考えます。

[画像のクリックで拡大表示]
北海道ガーデン街道8つのガーデン
北海道ガーデン街道8つのガーデン

 北海道ガーデン街道は十勝、富良野、旭川、大雪にある8つの民間有料ガーデンをつなぐ全長250kmの観光ルートです。2009年に、それまで個々に活動していた7つのガーデンが連携して「北海道ガーデン街道協議会」を設立。首都圏などで積極的な広報活動や旅行会社へのセールスを行った結果、参加施設の入園者数は2009年の35万人から2012年は55万人へ、3年で54%増加。中でも5つのガーデンが集まる十勝エリアでは10万人から35万人へ、3.5倍という高い伸びを見せました。

北海道ガーデン街道 入場者数の推移(単位:人)

  2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度
十勝
(5ガーデン)
10万7877 14万8853 24万9162 35万1648 33万6331
全施設
(7ガーデン)
35万6553 37万1439 43万5338 55万0201 51万3593

※2012年度は「北海道ガーデンショー」の開催年。

 十勝エリアはかつて関東の旅行代理店から「見る場所がない」と通過型観光地のレッテルを貼られ、従来のパックツアーでは有名観光地と温泉を駆け足で回るものでしたが、北海道ガーデン街道という新たな観光ブランドを手にしたことで人気観光地へ転換。これを機に街道沿線では2泊以上する例が多くみられるようになりました。

 日本国内には「○○街道」をうたう観光ルートが多数存在。観光庁は「広域観光周遊ルート」を認定していますが、現状では一般の認知を得ているものはほとんどありません。その中で北海道ガーデン街道はなぜ成功することができたのでしょうか。もとよりセールスプロモーションだけで成功するはずもなく、マーケティングやビジネスモデルの構築、ブランディングもやって当たり前のこと。その根幹はやはり、7つのガーデンが思惑絡みの烏合参集ではなく、事業の成功に必要な土台としての連携に至ったことといえるでしょう。

 十勝エリアには2009年当時、帯広市に1966年に開園した日本初のコニファーガーデン「真鍋庭園」と、1989年にガーデニング界のカリスマが開園した「紫竹ガーデン」、2007年に六花亭がメセナ活動で中札内村に作った「六花の森」、十勝毎日新聞社のカーボンオフセットの森づくりから始まり2008年清水町にグランドオープンした「十勝千年の森」、2009年に幕別町に開園した「十勝ヒルズ」という5つの代表的なガーデンがあり、それぞれ仲は良かったものの、特に連携はしていませんでした。その状況からどのようにして、120km離れた富良野や200km以上離れた旭川のガーデンを巻き込んだ広域連携をするに至ったのでしょうか。

次ページ 客足が伸びない! 悩んだ末に思いついた連携、ヒントをくれたのは