駅から美術館を結ぶルートの商店街の通行量が増加

2015年4月に開館した大分県立美術館
外観©Hiroyuki Hirai 画像提供:大分県立美術館

 2015年11月13日(金)~15日(日)、大分市が中心市街地で行った通行量調査で、最も通行量が多かった地点はJR大分駅北口の「府内中央口広場(西側宝くじ売り場付近)」で、3日間の合計で前回調査比184%増、日曜日に限定すると242%という高い数値を示しました。また駅から大分県立美術館へ向かう道上にある商店街でも顕著な増加傾向が見られました。駅から北に伸びる「セントポルタ中央町」では調査した8地点中、6地点で通行量が増加。中には前回と比較し2~3割近い伸びを見せた地点が2カ所あり、「ガレリア竹町」でも美術館に近い2地点で増加が見られました。

表2 新たな大型施設の開業と利用者数等
2015年6月平日昼間に歩く人が増えていた。市調査で通行量が増えた(左)古いビルや倉庫をリノベしたカフェなどが増えてきた「ガレリア竹町」、(右)週末ライブやファッションショーなど、活性化イベントも多数開催してきた「セントポルタ中央町」

 一方、調査した41地点のうち19の調査地点で、3日通して通行量が減少。中心市街地にある11の商店街の中で効果を実感できた地域とそうでない地域が鮮明になりました。大分駅北側の商業地の真ん中には大分のメインストリートの「中央通り」が走っています。その西側には大分県立美術館という新たな「芸術文化拠点」ができ、駅からの動線となったことで通行量を増加させましたが、西側でも動線から外れたエリアや中央通りの東側など、その人の流れを商店街全体に回遊させるまでには至っていません。駅ビル開業1周年を迎え、大銀経済経営研究所が中心部の商店を対象にしたアンケート調査で、開業の影響を「マイナスと受け止めた店舗」は30.2%、「プラスと受け止めた店舗」は22.6%、半数近くは「プラスマイナスゼロ」と回答、評価は分かれました。

 しかし基本計画の第二期2年目、2015年度は「歩行者通行量」と「まちなか滞留」の2つの評価指標で目標をクリア、空き店舗対策による新規出店数は49店舗と目標である40店舗を大きく上回りました。事業の真の評価は小売業の年間商品販売額の数字等を見なくては早計にできませんが、新たに集客力を持つ新駅ビルと美術館の2点が生まれ、それを結ぶ動線が中心市街地に引かれたことで、そこに新たな人の流れを生み出したことは誰もが認めるところです。

 またこうした中で民間事業者の意欲の高まりも見えてきました。中心市街地でのイベント開催数も年々増えています。このような地域のやる気は2011年11月にJR九州による新駅ビル建設の概要が発表されて以降、次第に高まってきたといいます。そのベースにはJR九州の戦略があります。JR九州は駅ビル建設に150億円を投じ、大分の新しいランドマークとすることを目指すとともに「駅ビルの一人勝ち」ではない、駅を中心とした新たなまちづくりを志向、地元商店街などと連携した取り組みを深めてきました。

 JR九州は平成28年度までの中期経営計画「つくる2016」において「駅周辺のまちづくりを通じた鉄道利用の促進(鉄道沿線人口の維持拡大)」を明確な方針として打ち出しました。それに次ぐ「JR九州グループ中期経営計画2016-2018」ではこうしたまちづくりを通じ、連結営業収益を2015年度の3779億円から10年後には5000億円にするという戦略目標を掲げており、2016年5月には大分駅前では有料老人ホームを開業、2018年2月にマンション建設を予定しています。

 その戦略に基づき、地元商店街等との連携を積極的に進めています。「Theまちなかバーゲン」は、JRおおいたシティなど3つの大型商業施設と中心街にある5つの商店街が連携し、以前はバラバラに行っていたセールやイベントを一斉に行うものです。1カ月に及ぶ期間中、情報発信も一体的に行います。こうした企画を推進するのはJR等の施設と商店街団体、まちづくり会社でつくる「大分都心まちづくり委員会」で、委員会では駅を中心としたまちの魅力づくりについても議論を重ねてきました。

 2015年駅や商店街の中には「大分らしさ」を感じさせる郷土料理を提供する店も多く見かけました。外からの客を迎えるため、大分らしさとは何かを地域で考える中、そうした取り組みも生まれてきたものと考えられます。ハード整備はほぼ完了し、新施設オープンの効果も次第に薄れていく中、沈んでいた地域がどうしたら訪れる人に楽しんでもらえるかを自ら積極的に考え、工夫し始めています。今年は9年ぶりに「歩行者天国」の復活も決定しました。

 大分市は新施設開業による来街者の増加を一時的なものとせず、今後これをどう維持するか、取り組みが求められるという認識を示しています。今後は大分市だけでなく、東九州の中核、ハブとして周辺地域とも連携してイベントの開催や観光PRを行い、広域での集客を図りたいとしています。大分県は「大分県文化創造戦略」を打ち出しており、2018年度の「国民文化祭」や2019年の「ラグビーワールドカップ」の開催地に決定していることから、県との連携も図りながら、今後はスポーツ・文化プログラムの相乗効果も狙っていきたいとしています。

 大分駅北側、中央通りの東エリアでは「歴史文化観光拠点」と位置づけられた府内城跡(大分城址公園)内にあった大分文化会館の解体に伴い、現在利活用の検討も進めているところです。

旅で見つけたお気に入り(27)箱根・塔ノ沢の土木遺跡と美食グルメ
ふと思い出して食べに行きたくなる! 鯛ごはん懐石の「瓔珞(ようらく)」
瓔珞の名物、ランチメニューの鯛ごはんのセット「松花堂 鯛ごはん」には鯛のお造りや季節の料理を盛り込んだ松花堂、デザートも付いてくる。鯛ごはんは鯛の形の器に入っている

 一時活発化した火山活動も落ち着き、ロープウェーの運行や名物の黒たまごの販売も再開となり、そろそろ箱根に出かけてみようという方も少なくないでしょう。箱根といえば、すぐに温泉が思い浮かびますが、塔ノ沢にはわざわざ訪れたい美食グルメがあります。

 塔ノ沢温泉の入り口に建つ、鯛ごはん懐石の「瓔珞(ようらく)」は目の前を早川が流れ、店の窓からは2015年に国の重要文化財に指定された「国道一号箱根湯本道路施設」の土木遺産、「千歳橋」と「函嶺洞門」を見ることもできます。

瓔珞からは、(左)塔ノ沢温泉を流れる早川の流れや(中)(右)国の重要文化財に指定された千歳橋と「国道一号函嶺洞門」の姿を眺めることもできる。 画像提供:箱根町役場

 瓔珞の名物「鯛ごはん」は京都の名料亭「瓢亭」で修業したご主人が、お祝い事や神事で重宝されてきた鯛を使った料理として考案したもので、箱根山の天然水を用いた昆布だしで米を炊き、赤穂の天然塩で焼いた鯛の身をほぐしご飯と共に頂きます。

 一番人気のランチメニュー、鯛ごはんのセット「松花堂 鯛ごはん」は鯛のお造りや季節の料理を盛り込んだ松花堂、デザート付き。セットはランチのみで、なくなり次第終了となります。

 箱根で鯛?と思う方もいるかもしれませんが、店から車で15分のところには小田原漁港があります。小田原といえば、蒲鉾が有名ですが、相模湾には箱根や丹沢の豊かな森、川から豊富なミネラルや養分が注がれており、小田原沖では急に海が深くなるため、漁場では豊富なプランクトンが育ち、美味しい魚が採れるといいます。

 瓔珞で出される鯛のお造りは実に味わい深く、思わず「これすごくおいしい」と声に出してしまうほどの美味。とにかく出される一つ一つの料理のクオリティがとても高いので、思い出すといつも食べに行きたくなります。

 ランチセットではまず松花堂が運ばれ、それを食べ終わった頃に真っ赤な鯛の器に入った鯛ごはんが運ばれてきます。ふたを開けると頭の部分に香の物が、身の部分に鯛ごはんが入っていて目にも楽しいです。

 場所は塔ノ沢駅を降りてすぐ、近くには塔ノ沢温泉を流れる早川沿いに有形文化財の宿が並び、箱根湯本方面へは湯本温泉の入り口まで約600mほど。散策も楽しめます。

箱根・塔の沢 鯛ごはん懐石「瓔珞」
「小田原の魚」小田原の魚ブランド化・消費拡大協議会
土木学会「関東の土木遺産」
神奈川県「箱根・大涌谷情報」