巨石、信仰、自然、そして多島美の絶景

ミシュラングリーンガイドで三ツ星を得た弥山展望台の眺望。瀬戸内海と島々を一望する360°のパノラマ、山頂の巨石や神社仏閣などの魅力は一言では表せない

 では、欧米豪の外国人を惹きつけるミシュラン三ツ星の絶景とはどんなものでしょうか。今回は弥山登山レポートとともにご紹介しましょう。

 2015年、宮島ロープウエーは開業55年を記念し「弥山総選挙」を開 催しました。1位はダントツで「弥山展望台&眺望」でしたが、2位には奇岩「くぐり岩」、3位には弥山七不思議の一つ、1200年以上燃え続ける奇跡の炎「消えずの火&霊火堂」が選ばれました。実は弥山は山頂の眺望だけでなく、ロープウエーで上がれるビュースポット「獅子岩展望台」をはじめ、「舟岩」や「鯨岩」など多数の奇岩怪石、七不思議に数えられる「干満岩」や「拍子木の音」、パワースポットの「御山神社」など、数多くの見所をその山懐に有しています。

 弥山には「大聖院」「大元公園」「紅葉谷公園」の3つの登山コースがあり、いずれも1時間半から2時間で山頂に上がることができます。ロープウエーを利用する場合、嚴島神社の裏手から紅葉谷駅までの無料バスも出ていますが、徒歩でも16分ほど。ロープウエーは途中、榧(かや)谷駅で「循環式」から「交走式」に乗り替え、獅子岩駅までの乗車時間は約14分。そこから弥山本堂までは歩いて20分ほど、弥山本堂から山頂へは「大日堂経由」と「三鬼堂経由」の2つのコースに分かれていますが、いずれを進んでも10分ほど。上り下りでコースを変えれば多くの名所を一度に見ることができます。紅葉谷駅から山頂までの往復所要時間の目安はおおよそ2時間です。

(写真左)紅葉谷駅から8人乗りの「循環式ロープウエー」で途中の榧谷駅まで行く(約10分乗車)。 (右)ロープウエーの終点、獅子岩駅を出ると「獅子岩展望台」があり、ここでも瀬戸内海の多島美の絶景が楽しめる

 時間に余裕がない場合や登山が難しい場合などは山頂へは上がらず、ロープウエー獅子岩駅を降りたところ、標高430mにある獅子岩展望台から瀬戸内海国立公園の内海の多島美を見ることもできます。突端には獅子岩と呼ばれる場所があり、瀬戸内海をはさんで大黒神島、大奈佐美島、能美島、江田島など8つの島々と四国、広島市の眺望を楽しめます。紅葉谷駅からの往復所要時間の目安はおおよそ1時間。ただ、いずれの場合も混雑する土日やGWにはロープウエーの乗車にかなりの待ち時間を要することもあるので注意が必要です。

 とはいえ、弥山に行って山頂に行かないのは、フルコースを頼んでメインディッシュを食べずに帰るようなものです。

(写真左)獅子岩駅から山頂は約1km、所要時間は40分ほど。(右)道の途中には数多くの巨石奇岩が見られる

 獅子岩駅から山頂へは平たんな道ばかりではありませんが、気候が良い季節で動きやすい服装やスニーカーなど歩きやすい靴であれば、それほど苦労せず登っていくことができます。道の途中には巨大な奇岩怪石なども多く、歩いていて退屈しません。中間には弘法大師が建て、100日間の求聞持秘法を修したとされる「求聞持堂」があり、「弥山本堂」や「行者堂」、弥山七不思議の「消えずの霊火堂」と「錫杖の梅」なども見ることができます。ここでは多くの人が一息ついて、神秘的な真言密教の世界に触れ、また山頂へと上がっていきます。

 そこから三鬼堂経由のコースへ進むと、途中には安産や学業にご利益があるといわれる「観音堂」と「文殊堂」、その先には奇岩「くぐり岩」と「不動岩」があります。くぐり岩はその名のとおり、自然が創り出した巨岩のトンネルで、大人が腰をかがめずに下をくぐることができます。くぐり岩を過ぎれば山頂はすぐそこです。

途中には(写真左)弥山七不思議のひとつ、消えずの火「霊火堂」と「弥山本堂」。(右)奇岩「くぐり岩」この先に、山頂の「宮島弥山展望休憩所」がある

 山頂に上がれば、そこには360°の眺望が開けており、人々は思い思いの場所でその絶景に目を凝らします。山頂の巨石の上に立つ人、巨石の上に腰を下ろし感慨にふける人。山頂には獅子岩展望台より多い12の島を見ることができる弥山展望台があり、そこに上がれば、そうした人々の姿も眼下に収めるミシュラン三ツ星の絶景を見ることができます。

 展望台は2014年リニューアルされたばかりの真新しい三階建て。コンセプトは「座」で好きなところに座り絶景が楽しめます。三階はさえぎるもののない広々した空間で空と海と山が一体となったビュースポット。それに対し二階は壁が庇となって日差しを遮り、内部は日陰になって過ごしやすく、そこから見る外の景色はまるで一幅の絵のようです。

 山頂展望台の眺めは獅子岩展望台とは全く異なるものです。山頂の景色を見た高揚感は言葉に尽くしがたく、登った者だけが知るものです。

 しかし取材に訪れた3月21日は春休み期間中、振替休日で多くの観光客が宮島を訪れているにもかかわらず、山頂で会う人の数は非常に限られたものでした。これほど優れた観光資源でありながら、なぜ日本国内では認知度が低いのか。広島出身の友人や、関東の国立公園の観光に関係する人たちに聞いてもその名を知る人はほぼ皆無でした。

 宮島観光は何故、この資源を生かすことができないのか。今のところ、弥山に訪日リバウンドの効果は出ていません。