初の料亭体験、若いスタッフの接客が秀逸

 さて今回、人生で初めて、赤坂の料亭に出かけることにしました。勝手がわからないことが多く、まずは電話で問い合わせてみました。丁寧にこちらの意向を聞いて相談に乗ってもらえてほっとしました。費用も、昼食は7000円からと思ったよりリーズナブルです。

 当日の予約の時間、浅田の屋号「くずしまんじ」を染め抜いた炭黒の大暖簾の向こうには、和服を身にまとい玄関の方をまっすぐ向いて客の訪れを待つ女性の姿がありました。暖簾をくぐるとドアが開き、中へ入ると赤坂の喧騒が消え、非日常へと誘われます。玄関には香が焚かれ、季節を先取りした花や調度が飾られています。

 お座敷に案内されると、フェイスタオルほどのボリュームたっぷりの俵型のおしぼりが運ばれてきます。接待の場合は、ホストの方は30分ほど前に来て、飲み物や客の帰りの車の用意などを料亭側の担当者と打ち合わせをするそうですが、この日はちょっとした会食とロケハンを兼ねたお試し利用。ソフトドリンクをお願いした後は、まったりと床の間を拝見したり、写真を撮ったり。お座敷は掘り炬燵になっていてリラックスでき、個室なので他の客への気兼ねもなく快適です。そうこうしているうち料理が運ばれてきます。浅田は金沢から食材を直送しており、食事は加賀料理。二時間ほどかけてゆっくり食事をし、初めての料亭体験はなかなか満足度の高いものでした。

(左)新卒や転職組の若いスタッフが多い。(右)料亭ならでは、芸者を呼んでのお座敷遊びもできる

 当初想像していたイメージと違っていたのは、接客するスタッフが非常に若かったこと。にもかかわらず、さすが赤坂の料亭と思わせる質の高い接客でした。

 これについては8年前から従業員の採用と教育に力を入れているそうで、採用では新卒採用や異業種からの転職組などに、一から浅田流のやり方を教えて育てていく方針を取っています。スキルアップに関しては、お茶は毎月金沢から、日本舞踊は名古屋から先生を呼び、外部講師による接遇や着物に合わせたヘアメイク、さらには増加する外国人客に対応するため英語の研修会もスタートしています。いずれも自由参加ですが、自分磨きにもつながると若いスタッフの意欲は高いそうです。

 「やらされている感」はどう教育してもにじみ出てしまうもので、名のある宿や料理屋でも必ずしも一流の接客が約束されているわけではありません。むしろ名があるために、慇懃無礼な「上から目線」の接客にあって不快になることも少なくありません。

 松太さんは29歳の時、勤めていた銀行を辞めて実家の「浅田」を継ぐことを決意。もともと家業を継ぐつもりはなく、料亭という業態は先がないと思っていたといいますが、継ぐと決めた時には日本の料亭文化を守りたいという思いがありました。そこには収益を目的とした安易な平日昼間や土日祝の切り売りではなく、料亭の本質である「和のもてなし」を提供したいという思いがあります。

 個人客に対しても料亭が魅力的な空間となるためには、料理にも変革が必要です。ビジネスがメインの接待客と異なり、個人客は料理を楽しみに訪れる客です。料理で重視するのは料理の始めと終わり。最初に出てくる料理に驚きや感動があること、最後に食べるものの満足度はとても重要です。料理は職人の世界で、意識改革も一筋縄ではいきませんが、浅田では各店で季節ごとに新たなコースメニューの試食会を行い、調理、接客、受付の各係が参加して、客目線で意見を出し合っています。

 また、こうした変革は赤坂の花街やまちづくりにも新たな動きを生み出しつつあります。