広大な地域をカバーするDMOが離陸できた理由

 国は日本版DMOに大きな収益は必要ないとしています。しかし、自ら収益を上げられない者が地域の稼ぐ力を引き出すことなどできるのでしょうか。

 とはいえ、過疎地の小さな農山林漁村等においてはその実現が難しい地域もあります。そこで必要となるのがそれを補完するシステムです。日本版DMOにも広域連携DMOから地域DMOまで3つの区分がありますが、地域が連携して仕組みを創り、その傘下で小さなまちでも着地型商品の企画販売ができるようにすれば、エリアで互いに客を呼び合うスケールメリットも生まれます。連携することで観光に多様性が生まれれば、リピーターの獲得やエリアの魅力度アップなど、ブランディングにも繋がります。

 ただ地域間連携のDMOの難しさは地域DMOの比ではありません。その成否を分けるものは何処にあるのでしょうか。

 北海道宝島旅行社は北海道全土をカバーしたDMOです。北海道の面積8万3450平方キロメートル。その広さは九州7県を合わせた面積4万2194 平方キロメートルの2倍にもなります。その広大なエリアをカバーするDMOは何故実現できたのでしょうか。

北海道宝島旅行社DMO形成・確立までの年表
1988年 鈴木氏リクルート入社。HRや地域活性事業等で仙台、東京、札幌、名古屋、九州等で勤務。
2005年 鈴木氏フレックス定年退職、北海道へIターン。2006年林氏も続く。
2007年 4月創業。全道廻り取材、構想へ賛同もらい、11月道内全域網羅した北海道体験.com開設。
2009年 北海道体験.com英語版を開設。
2010年 2010年 6月北海道観光まちづくりセンター設立。10月北海道宝島トラベル設立、社長に大和氏迎える。
2011年 第3種旅行業免許取得、旅行業開始。10月シンガポールで商談。
2012年 中国・上海で開催された世界最大の富裕層向け観光商談会「ILTM」に初出展。
2013年 北海道運輸局・北海道観光振興機構と共に富裕層向けファムトリップを企画・運営
2014年 北海道ラグジュアリートラベル推進協議会設立。第2種旅行業免許を取得。

 一つは同社の、地域への独特の眼差しにあります。例えば、旅は「他火」、他人様の火に当たらせてもらうことで、旅の魅力はその地域に住む人々との交流にあるとし、地域の魅力を伝える地域のガイドを「通訳」=北海道の宝としています。同社の「北海道体験com」や「地域旅」のプログラムはこうした目線に立ち、地域と共に創り上げた地域DNAに基づく厳選プログラムです。小さな農山漁村での観光地域づくりの支援も行っています。

 こうして開発された北海道宝島トラベルの「地域旅」は旅行口コミサイトの「トリップアドバイザー」が選ぶ札幌市内のツアー&アクティビティで「白い恋人パーク」に次いで2位に選ばれています。

 行政等でよくあるポータルサイトに体験プログラムを登録してもらうシステムでは、事業者登録でスクリーニングされることはあっても、ポータルサイトにとって最も重要なアクセスと顧客満足を得るプログラムの魅力や質等はノーチェック。良質な情報源たるレコメンドや利用者の声を反映したり、事業者やプログラムを魅力的に見せる編集機能もなく、新たな事業者やプログラムの発掘もほとんど行われません。

 また同社では急増するインバウンド誘致において、海外エージェントによる発地型コーディネートではステレオタイプの団体パッケージの枠を出ることは難しいと考えており、価格競争による質の低下も懸念されることから、地域への経済波及効果、活性化への貢献度が高い「地元DMO」による着地型コーディネートの必要性を訴えています。

 北海道宝島トラベルが扱うFIT向けのオーダーメイドツアーの中にはシンガポールから大人10人、子ども1人で参加した7泊8日の道内旅行、312万円というものもありますが、ツアーの相談は英語ができるコンシェルジュチームが対応、北海道IN・OUTの間のすべてをフォローしてくれます。言葉や地理、風習等に不案内だったり、初めてトライするアクティビティでも各現場で丁寧なサポートがあるため不安やストレスがなく、参加者は自分が思い描く旅を満喫できます。

 ツアーはウェブに各月のモデルアイテナリー(行程)とSITのコンテンツを提示、それをベースに客の要望に応じてカスタマイズしていくスタイル。例えば、1月なら雪の中をスノーシューを履いて歩いたり、カヌーに乗って冬の湿原でネイチャーウオッチングをしたり、氷上でわかさぎを釣って天ぷらにして食べたり、鶴を見たりと、北海道ならではの体験を大雪山や網走、阿寒等で行う6泊7日のツアーがお勧めとのこと。氷上でのわかさぎ釣りでは釣り道具やテントはもちろん、長靴や防寒着も用意してくれ、釣りのコツもプロから指導が受けられるという至れり尽くせり。

 富裕層FITの獲得ではマーケットを分析、明確な戦略を持ち、プロモーションでは世界最大の富裕層向け観光商談会「ILTM」へ出展するなどで着実に結果を出してきました。 

 今後は、地域の人の手で地域の細やかな旬の魅力を最大限に活用した商品化ができるよう、各市町村・エリアにおける「地域版DMO」構築支援とそのネットワーク化に取り組み、観光地域づくりによるメリットを北海道全体で最大限享受できるようにしたいといいます。

旅で見つけたお気に入り(25)
1日ゆっくりアートなまち歩き。グルメも楽しめる「笠間やきもの散歩道」(茨城)
画像左・中:「回廊ギャラリー門」はその名の通り、中庭を囲む回廊型のギャラリー。自然光と器が創り出すアートな空間が女性に人気。画像右:ガラス作家の作品を集めた「Glass gallery SUMITO

 笠間と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか? 有名どころでは日本三大稲荷の「笠間稲荷神社」や陶器の「笠間焼」、祭りやイベントでは「笠間の菊祭り」や「陶炎祭(ひまつり)」でしょうか。笠間市は茨城県を代表する人気観光地の1つ。2013年の延べ観光入込客数は県内2位の354万人を誇りますが、その多くは初詣や祭り、イベント目当ての日帰り客です。

 しかし笠間中心部には、自然豊かな丘陵に広がる総面積54.6ヘクタールの「笠間芸術の森公園」の周りに窯元が連なる「やきもの通り」、工房直結のショップが集まる「陶の小径」、個性的なアートギャラリーに加え、12のレストランやショップ、ホテル等が立ち並ぶ「笠間ギャラリーロード」があり、一帯は「笠間やきもの散歩道」と呼ばれています。

 歩いて回れるエリアには30以上もの笠間焼等を扱う窯元やギャラリー、体験工房、陶芸の美術館や研究機関等があり、数百人の陶芸やガラス作家の手がけた作品の中から自分のお気に入りの器を探したり、作陶やガラス作品作り等の体験も楽しむこともできます。

 ギャラリーロードには笠間焼のギャラリーショップ「回廊ギャラリー門」があります。中庭を囲む緑の回廊はこだわりのアートスペース、屋外にあって自然光が差す空間は器をより一層いきいきと美しく見せます。蔵を利用したギャラリーでは陶芸家の個展が行われ、女性店長のセンスが光る和小物のセレクションには女性客の歓声が上がります。

 全国のガラス工芸作家の手作り作品を集めたセレクトショップ「glass gallery SUMITO」にはグラス等の器だけでなく、アクセサリーやギフトにぴったりの小物など、様々なガラス作品が並びます。扱う作家の数や作品数は他にないラインナップで、総ガラス張りのギャラリーは外からその充実が見て取れます。2階にはガラス工芸の体験教室もあり、カップルや家族等が作品作りに訪れます。

笠間ギャラリーロードにある 「cafe WASUGAZEN笠間店」(写真左)の隣には、かわいいお稲荷様のある公園が(写真右)

 散策に疲れたら、話題のショップやカフェ・レストランで一休み。行列ができる「佐白山のとうふ屋」ではお豆腐屋さんならではのスイーツも人気です。ランチには笠間の食材をふんだんに使った料理や自家製ケーキが頂ける「cafe WASUGAZEN笠間店」がお勧めです。実はここ、映画の予告編を制作する会社がプロデュースしたお店で、店内では最新映画の予告編が流れています。庭に面したテラス席などもあり寛げるお店です。お隣にはかわいいお稲荷様と小さな公園があり癒されます。

 笠間ギャラリーロードへはJR笠間駅や友部駅からワンコインで利用できる「かさま観光周遊バス」に乗れば10分ほど、笠間稲荷神社や日動美術館等へも楽々アクセスできます。秋葉原から笠間までは片道1500円の高速バス「関東やきものライナー」も運行されています。是非、アートな休日を笠間で過ごしてみませんか。

笠間ギャラリーロード
笠間観光協会