日本版DMOの成否を分ける分岐点とは
本題に入る前に、まず国が進める日本版DMOの基本的な考え方を押さえておきましょう。日本版DMOとして国の支援を受けることができるのは、地方公共団体と連携して観光地域づくりを担う候補法人です。登録にあたっては複数の都道府県にまたがる「広域連携DMO」、複数の地方公共団体にまたがる「地域連携DMO」、基礎的自治体である単独市町村を対象とした「地域DMO」の3つの区分があります。地域間連携は共通のコンセプト等が存在すれば、必ずしも地域が隣接している必要はありません。
申請にあたっては「日本版DMO形成・確立計画」の提出が必要となりますが、申請は法人の設立前、構想段階でも可能です。登録された候補法人の形成計画は原則公開。計画にはKPI(主要業績評価指標)を設定してPDCAサイクルに基づく事業評価を行い、少なくとも年1回、国に事業報告することが求められます。
その役割は国内外から地域へ観光客の流れを戦略的に創出するため、観光に関する各種データの収集分析、明確なコンセプトに基づいた戦略の策定、それを着実に実行するための地域での調整、観光の質の向上やプロモーション等を担える組織や人材の確保、その意思決定のしくみや業績に関する責任者の明確化等が求められます。
また日本版DMOが自律的・継続的に活動するには安定的な運営資金確保の見通しが不可欠とされています。資金確保の手段としては収益事業(物販、着地型旅行商品の造成・販売等)、特定財源(法定外目的税、分担金)、行政からの補助金・委託事業等が想定されています。
一方で国は、日本版DMOは必ずしも大きな収益を上げる必要はなく、地域の観光協会等、従来の観光振興組織に日本版DMOの機能を付加する形もよいとしています。ただ、そもそもそこが機能しないからできた制度ともいえます。いずれにせよ、候補法人の登録申請の受付は既に始まっており、甘い審査で玉石混交となれば、重点的支援も名ばかりとなります。
日本版DMOの形成と確立、その成否を分ける分岐点はどこにあるのか。北海道宝島旅行社の歩みとともに見ていきましょう。
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