この1/3はもともと素養のある人たちです。のこりの1/3は、ロールモデルとなる同僚ができることで、時間をかければ変わっていきます。残念ながら1/3は完全に変わることは難しいのですが、周囲が変わっていくことで、本人も変わらなければいけないという危機感が持てれば数年かけて変わっていきますし、辞めていくことで組織からいなくなるケースもあります。いずれにせよ、全員がすぐには変わらない、変わるために時間をかけて働きかけていく必要があります。

2.透明性が高く納得がいく評価基準を作る

 マネジャーの質を高めていくうえで、比較的短期間でできるのが、評価基準の統一化です。社内で自社の数年先のビジネスを考えながら、必要なスキルを洗い出せる10~20名程度のキーパーソンにヒアリングをしながら、評価基準(スキルと習得レベル)を専門職と総合職の両方で作ります。

 新たに作った評価基準、さらに会社が考える必要なスキルは、組織内で丁寧に説明しながら、浸透させます。

 例えば、10年ほど前に評価基準を作ったある会社では、現在だけでなく、未来に必要なスキルとして、デザイン思考が挙げられました。デザイン思考を5年ほどかけて全社員が実務レベルで使えるようにすることで、会社は社員が自律的に成長を生み出せるだろう、これを評価指標に組み込んでいこうという議論が何度も繰り返されたので、まず全社員が研修を受けるところからスタートしました。このように、現在だけでなく、未来を考えて評価基準を作っていくことが大切です。

 新しい評価基準ができたら、30人程度でまず評価をしてみます。マネジャーと本人に評価をさせてみて、違いを見た後、本人をよく知る以前の上司や他の部門のマネジャーにも評価をしてもらいます。ここで出てきた差は何に由来するのか、評価をした人たちにヒアリングをし、評価軸の問題点と評価する側の問題点を洗い出し、必要に応じて評価基準に修正をかけ、評価ガイドを作成します。

 次に、この評価ガイドをベースに200人規模で評価を実施します。この時も、本人、上司をはじめ、数名の関係者で評価を行います。そして、全員の評価結果を比較して、上司の評価が著しく異なる人をピックアップし、ここから中間管理職の評価の歪みを洗い出していきます。

 ある特定のセグメントにのみ厳しい評価をしているのか、それとも全体的に評価が厳しいのか・甘いのか、それはなぜ起きているのか、会社として適正と判断するものとどのくらい乖離があるのか。その結果をマネジャー本人に伝え、適正な評価が行われるように指導していきます。

3.キャリアパスを明確にする

 評価基準緒の策定とともに、考えたいのが組織内で活躍するためのキャリアパスを明確にすることです。

 1つのキャリアパスだけでなく、専門職から総合職へ、総合職から専門職へと異動できる様々なキャリアパスも設計します。キャリアパスは、習得スキルレベルで設計されているため、ライフイベントを見据えて、一時的にスローダウンできる部署への異動や、子育てや介護が終わったタイミングでパワフルに働ける部署へ異動するなど、キャリアを描きやすくするためです。

 こうして評価基準と働く人のキャリアパスを踏まえたうえでマネジャーは現場のスタッフと向き合います。とても時間と労力のかかる作業ですが、一度、評価を受けて傾向がわかると、働く側としても会社としても修正していきやすくなります。また会社が全マネジャーを横並びで評価していることが社員に伝わると、自分の評価に対しても不満を抱きにくくなります。

 評価に合わせて、本人のキャリアについてもディスカッションすることで、どこにハードルがあるのか、何を経験していかなければならないかを前向きに議論していけます。

 最終的には、評価と報酬を連動させていくことで、「多様な働き方をしている人たちも適正な評価をされている」と理解が進みますが、そこまでのステップに行くには、どんなに早くても2~3年の時間がかかります。

◇◇◇ 

 多様な人材をマネジメントしていくには、一人ひとりの状況やニーズを詳しく聞いていき、組織のゴールをどのように達成していくのか、ビジネス・プロセス変革、リソース配分、評価を適切に行える中間管理職が不可欠です。中間管理職育成は、時間も労力もかかることですが、始めた企業から変革が起きています。多様性マネジメントの必要性を感じていらっしゃる方は、パイロット・プロジェクトから実施してみてはいかがでしょうか。

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