自分だったらどう謝罪するか考える

 さらに一歩進めるために、自分だったらどう謝罪をするかを考え、メモしておきます。後から謝罪案件の状況をアップデートしたり、見直して自社への示唆を出すときに、その時に感じたことや思ったことを記したりしておくと、当時のことを思い出しやすくなるメリットもあります。記憶にタグ付をするのです。

 例えば、金子恵美氏の公用車による保育園送迎問題の件は、「私だったら、自ら謝罪はしなかった。総理をはじめとする党本部と総務省への根回しをもっときちんとやり、女性の働きやすい社会を作る」とメモに書いてありました。

図3: 金子氏の件の筆者のメモ
図3: 金子氏の件の筆者のメモ

 何度かこの連載でダブルスタンダードや無意識のバイアスについて解説し、女性で要職についている人は、男性よりも攻撃の対象になりやすいことを説明してきました。今回のような男性があまりしないこと(保育園への送迎)を、ポストに紐づいている特権を利用して行うと批判される可能性が高いのは、あらかじめ分かっているべきことでした。東京都議選の前であれば、自民党潰しのネタになるものは、なんでも食いつかれるのも容易に想像ができるでしょう。

 幼子を抱えた働く母として、子育てをしながら、仕事で結果を出すならば、一分一秒ムダにはできない。自分に与えられた公用車というリソースの使い方を確認し、問題ないので保育園の送迎に使ったという説明通りであるならば、この点について謝罪すべきではありません。

 金子議員は最終的には、保育園にベビーカーを使って徒歩で送り迎えをするということを表明されましたが、仕事と子育ての両方で結果を出すために、最善の解決方法だったのでしょうか?この謝罪と解決法には、大いに疑問が残りました。

 彼女が謝罪すべきだったのは、働く女性が直面している課題に対して、適切な根回しをせず、批判されるだろう行為をしたことでしょう。総理をはじめ、自民党幹部に、「これは一億総活躍で必要なことです。ご理解の上、援護射撃をしてください!」と頼んで回って、味方に引き込み、自分が働きやすい環境を作る事前準備が必要だったと思います。それが、彼女の後を行く働く女性たちの未来にもつながり、道義的な解決となるからです。

 公式謝罪の5つのステップの3では、公式謝罪の目的は何かを検討しますが、戦略としてやるのか、道義としてやるのかの2点を考えます。このケースでは、道義的として捉えたほうが、個人としても、組織としても、そして社会としてもプラスとなる謝罪になったと思いました。

◇◇◇

 今回は、日々の時事ネタを練習台にした、自分でできる謝罪方法の学び方をご紹介しました。ちなみに、先日PR動画がSNSで話題に上がった牛乳石鹸は、 謝罪でなく見解コメントとしたことは、謝罪するメリットを企業として見いだせなかったのだと、私は分析しています。  本当の有事には、リスクコンサルタントをはじめとしたプロに相談しながら謝罪をするかどうかを決め、謝罪することになるでしょう。プロを有効活用するための最低限の知識を持っていなければ、有事にいい結果を出すことはできないので、このような練習はいざというときに、自分の身を助けてくれることになります。みなさんもぜひ、謝罪の枠組みで練習をしてみてください。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。