個人の作業もイシューツリーで全体像を作ることがカギ

 不安な気持ちが自分の中にあると認識すると、次のアクションが見えてきます。私は、専門知識がほとんどない中での意思決定が不安要素でした。しかし、これまでにも専門外の領域で仕事は多数してきていたので、その時の経験を活かすように頭を切り換えました。

 具体的には、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)時代に、現早稲田大学ビジネススクール教授で、当時BCG日本代表だった内田和成さんに叩き込まれた、仮説思考ベースで仕事を進めることです。内田さんはBCGでのメンターだったこともあり、仕事だけでなくプライベートの相談にもよく行きました。結婚報告に行ったときに、「その結婚は長続きするって仮説なの?」と聞かれて、爆笑したことがあります。耳にタコができるほど、「論点は?」「仮説は?」と聞かれて育てられたので、些細なことでも論点整理をし、全体像の中で自分の立ち位置を考えることができるようになっていたのです。

 WAR ROOMに戻った私は、自分の担当の部分のCentral questionを定義し、論点を整理するために自分の担当業務についてのイシューツリーを作り上げていきました。前回も述べましたが、イシューツリーとは、下記の図のようなCentral Questionを出発点に論点で構成されるロジックピラミッドです。イシューツリーを作りながら、「仮説は何か」もあわせて書きだしました。仮説が作れないところは、「仮説なし」と書きました。

 ちなみに、イシューツリーは毎回すべてゼロから作ります。過去からの流用はほとんどしません。理由は、その状況にあった適切なイシューツリーにしなければ意味がないからです。したがって、他の人が過去に作った、詳細がよく分からないイシューツリーは参考にならないので、誰かにイシューツリーを見せてほしいと尋ねることはありません。自分の頭でしっかりと考えて動いていく。これが大切なことです。

図1 Central Questionとイシューツリー

 できあがったイシューツリーを金融業界30年以上のベテランの同僚に見てもらい、30分ほどディスカッションし、修正を加えていきました。自分では仮説が立てられない部分に対して、彼が考える「たぶんこれが正解であろう仮説」についてもアドバイスをもらうことができました。専門家に確認するところを明確にし、社内外のエキスパートを紹介してもらいました。

 こうして、自分の経験があまりない分野でやるべきことを明確にし、意思決定をしながら業務を進めて行ったのです。

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 リーマン・ショックでの経験は、未知のものや危機的状況のときに、冷静に考え、人を巻き込みながら動いていくことで、問題解決の道はあるのだと私に教えてくれました。自分一人で不安だと悩んでいても物事は前には進みません。自分がコントロールできる不安なのか、コントロールできない不安なのかを明確にし、それぞれに対して手を打つことで、ぶれない意思決定ができるようになります。そして、自分で解決できないことは人に聞けばいいのです。何に対して答えを出そうとしているのか、全体像を是非作ってみてください。目的地を示すことで、適切にその場所にたどり着ける方法をアドバイスしてくれる人は、実にたくさんいるのです。