イシューツリーを作る意義

 準備期間がほとんどない状況で意志決定を伴うプロジェクトを立ち上げる場合、短期間でプロジェクトが答えを出すべき課題を明確にすることが、プロジェクトの成否を決めると言っても過言でないでしょう。もちろん、時間が十分にあったとしても、イシューツリーを作るのは効果的です。理由は3つあります。

1)メンバー全員が共通目的を持って、同じ方向に向かえる

 仕事は1人でするのではなく、チームでする場合が多いでしょう。他人が何を考えているのか、すべて知ることは無理です。そこで、チーム全体が共通して全体像を持つことで、同じ方向を向くことができます。「今、私たちが答えを出そうとしているのは、これ」と自分たちがいる場所を明示できるので、迷子になりそうなときに、自分たちはどこへ向かっていたのか、立ち返る指針となります。

2)アドバイスを貰いやすくなるので、人の経験・知恵をフル活用できる

 イシューツリーがあると、人に相談しやすくなります。「論点はこれ」「分からないのはこの部分」と自分が分からない場所が明確になっているので、「この部分を知りたいなら、この領域のプロフェッショナルはこの人!」と相談相手を決めやすいですし、もし相談相手が分からなくても「○○の分野をよく知っている人は誰ですか?」と社内外で聞いて回りやすいのです。今回のケースだと、「リーマン・ショックのような未曾有の金融危機の乗り切り方をよく知っている人」を探すよりも、「○○事業の売却リスク評価が出来る人」を探す方が簡単です。

 そして、人に相談することで、自分が見えていなかったことを指摘してもらえたり、より適切なイシューの設定方法を指南してもらえたりします。適切な論点が設定されていて、それをイシューツリーで細分化してあると、専門家もどこまで分かっていて、どこから分かっていないのか、どの点だったら自分が付加価値をつけられるかが分かりやすいので、より具体的なアドバイスが貰えるケースが多いでしょう。

3)メリハリをつけることで作業が減らせる

 イシューツリーを作ることで、「この部分はすでに既知のことだから、作業しない」、「もうここは結論が出ている」、「ここは深掘りしないと結果が出せない」など、自分たちが答えを出そうとしていることに対してやるべき作業がどこにあるのかが明確になります。自分たちのやるべき作業を理解するだけでなく、いろいろな作業をしたけれど、自分たちの答えを出すためのアクションに繋がらなかったという事態をさけるために、どの部分に重きを置くのか、優先順位を考え、不要なモノは切るメリハリをつけるサポートもしてくれます。

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 課題設定の精度をあげる方法は、経験を積むしかありません。私もいまだに得意だとは思っていませんが、毎回「自分は何に対して答えを出そうとしているのか?」を意識して、書きだし、そしてチームでシェアして、その課題を精査しながら仕事をしています。イシューツリーもプロジェクト初期に作ったものと、プロジェクト終了時のものが異なることはよくあります。プロジェクトが終了したタイミングで、「最初に設定した課題と、最終的に出した課題はどこか違うか?」を必ず検証しています。そうすることで、自分の見えなかった課題について学ぶことができます。みなさんも自分の仕事における課題が何か、あらためて考えてみてください。

 最後に、今回のテーマである課題設定は、仮説思考を扱っている下記2冊が非常にわかりやすいのでご紹介します。何度読み返しても、学びの多い本です。

●内田和成著 『仮説思考』(東洋経済新報社)
●安宅和人著 『イシューからはじめよ』(英治出版)