自分たちが答えを出せることなのかにこだわる

 オフィスには、事業開発リーダーが次々とやってきました。集まったメンバーが最初にしたのは、私たちは「何に対して答えを出すのか?」について、いわゆるイシューツリー(図1)のCentral Question(課題)をどう設定するかの議論です。私は、タクシーの中で作ったメモをベースに、自分なりの意見を出すことができました。

図1 Central Questionとイシューツリー

 議論の結果、自分たちで答えが出せることをCentral Question とすることにしました。リーマン・ショックを受けて、米国市場だけでなく、各国でどのタイミングでどう変わるかは、自分たちがコントロールできない変数が多すぎて、精度の高い予測などできません。時間がない中、複数のシナリオを作って、シミュレーションし、リスク評価をするのも、時間のムダになりそうだという発言も出ました。そこで、読み切れない未来を考えるのはやめようと決めました。

 さらに、私たち事業開発部は何をすべきかという議論にもなりました。立場が違えば、設定する課題も異なります。原点に立ち返って、自分たちの会社の中での役割について改めて言語化した上で、課題設定を考えました。

 最終的には、今、この場にいる私たちがやるべきことは、経営陣が事業構造を変えていくために時間稼ぎをすることだと結論をだしました。「時間を稼ぐための資金の確保が確保できるか」を我々の課題として設定したのでした。どのくらいの時間が必要かについては、過去の構造改革の時の経験をベースに経営陣とディスカッションして案を出しました。必要金額を概算した上で、「ターゲット○円」と設定し、すぐさまCEOのジェフ・イメルトに電話。我々のアクションを報告、承認を貰いました。ニュースを目にしてからわずか1時間後の午前9時過ぎ。私たちは会社がこれから1年間生き残れるための資金を確保するプロジェクトを立ち上げたのです。

 会社全体の構造改革戦略と比べると、恰好のいい課題設定ではないかもしれません。しかし、自分たちが今すぐ答えを出せることにこだわったことで、とても短い期間でプロジェクトの目的を達成し、すぐに次の成長の軸を作る活動に移れたことはたしかです。結果として、会社の存続だけでなく、IoTという新しいビジネスで会社を成長させることにも繋がったのだと思います。

イシューツリーを作り、自分たちがやることを決める

 Central Questionを「時間稼ぎをするために、資金○円を○日で確保できるか」と設定した後は、それをどうやって実行するか、第4レイヤーまでのイシューツリーをチームで作りました。

 イシューツリーを細分化して自分たちがやるべき内容を明確にしたうえで、イシューツリーのどの部分を誰が担当するかを決め、各自が作業に入ります。このとき、私が担当することになったのは、なんとほとんど経験のない金融事業領域でした。今回のリーマン・ショックで最も大きな影響を受けた領域です。会社が厳しい状況を迎えるなかで、大きな責任を背負うことになったのです。果たして私にできるのか、不安が込み上げてきました。どんどん膨らむ不安にどう向き合って大きな意思決定を含む業務を進めたのかについては、次回、説明したいと思います。