お正月限定企画として、日経ビジネスの人気連載陣に、専門分野について2017年の吉凶を占ってもらいました。
今年はどんな年になるでしょう。
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 2017年を占うというお題で何か書かないか、しかも大吉、大凶などの吉凶もつけて、という依頼に、上海を生活のベースに置いている私は恐れおののいた。「科学的なものの見方」を是とする共産党支配下の中国では、占いもおみくじも邪教につながりかねない迷信として禁止しているためである。中国政府のシンクタンクである中国社会科学院が出している『宗教政策法律知識答問』という本では「宗教と迷信の違いは何か」との問いに、風水、厄払い、人相見などとともに占いもおみくじも、民衆を惑わせ財物をだまし取るもので法律の保護を受けられない活動だとして迷信のカテゴリーに入れられている。

 ただ、そうして迷信を禁じている官の方こそ、占いやおみくじが実は大好きで信用もしている節がある。上海を東西に貫く延安高架という高速道路と、南北に貫く南北高架という高速道路が交差するジャンクションにある龍の装飾を施した柱にまつわる話は、禁止されているはずの風水を中国人が実際にはいかに気にしているかを表すいい事例だ。

風水で危機を脱した高速道路

風水のアドバイスで龍の装飾を施したと言われる高速ジャンクションの支柱(上海市内)

 1990年代半ばにこの2本の高速道路を建設していた時のこと。工事は「神速」と皆が賞賛するほどのスピードで順調に進み、いよいよクライマックスとも言える2本の道路をつなげるジャンクションの建設に入った。ところが、ジャンクションを支えるのに絶対に必要な中心の柱を地面に打ち込むことができない。土木や設計の精鋭が集められ手を変え品を変え打杭を試みたがビクとも進んでいかない。工期の遅れで面子がつぶれることを避けたい当局は、上海一の高僧と呼び声の高い玉佛寺の僧を訪ね教えを請うた。するとこの僧は、「高速道路に沿って風水で言うところの龍脈が通っている。中でも柱を立てようとしているあのジャンクションの場所は、上海の真の中心で、そこに住む龍が怒っているのだ。経を唱え、柱に龍の装飾を施せば、龍は鎮まり、たちどころに柱は地面に入っていくことであろう」。高僧の言いつけ通りにしてみるとあら不思議、いままで押しても引いても煮ても焼いてもビクともしなかった地面に、スルスルと杭が打ち込まれていきましたとさ、という話である。

 この話にはいくつかのバージョンがあり、高僧は静安寺の僧だというものや、僧でなく風水師だというものもある。いずれにせよ、中国当局は、宗教活動は認めているが、先述したように、聖職者が風水を見ることは禁止している。当然、当局は、この話を否定しており真相は分からないが、仮に都市伝説だとしても、いかにもありそうな話だから成り立っているのだろう。

政府要人も占いに夢中

 さらに私の個人的な体験もある。中国の最高意思決定機関は、中国共産党の中央政治局常務委員会という組織。1990年代以降の改選では委員が7人か9人で推移していることから、近年、チャイナ7だとかチャイナ9等の言い方が流行っているようだが、1998年当時は7人だった。私はその年香港に住んでいたのだが、さる中国人の友人から、「この7人のうちの1人のお抱え占い師が香港に来ていて、ホテルの1室を借りて、親しい人やその友人だけを集めて運命を鑑定している。私も彼が来る度に見てもらうのだが、あなたも見て欲しいのなら紹介してあげる」と言われた。