丹羽:それで、これはアメリカでも日本でもそうなんだけど、やがて農村の人口が減るわけだから、1人頭の農村の収入が増えるということが起きるだろう。そして農業と都会の所得の差が縮まってくる。そのオン・ザ・ウェイに今ある。だから農民工の将来を悲観することはないのではないか。

 要するに資本主義の発展段階というのは、そういう形でオン・ザ・ウェイのところはやっぱり混乱がある。しかしながら結局、人間というのはしぶとく生きていくんです。

山田:もちろんそうですね。しぶといですよね。

丹羽:だから今までの農民工だって、何だかんだいいながら、やっぱり生きているわけです。

 ほかの人から見ると、農民工はそのうちに死んじゃうんじゃないかと思うようです。ところが、そういう世界ばっかりじゃない。農民工でもやっぱり有名になって、お父さん、お母さんを喜ばせたい、そういう人間の欲望、競争心というものがある。だから、そんなに悲観的にならなくてもいいと思っているんです。

山田:私もまったく悲観はしてなかったんです。ただ、その農民工たちが数年前から愚痴を言い始めたことにちょっとびっくりしたんですね。

丹羽:そうですか。

山田:ここ3年ぐらい前からちょっと弱気になっています。夢を見るとおっしゃいましたが、確かに夢は見られたんです。ところが最近、自分の番が来ないんじゃないかと思っている農民工は増えてきています。

勤勉な中国人は成功しやすい

丹羽:まあ、おそらく来ない人もいるでしょうね。なぜかというと、アメリカでもアメリカンドリームがなくなったからです。アメリカンドリームもそういうふうに、下層階級の人たちが一獲千金みたいなものをつかむわけです。その数が増えると、貧乏人でも金持ちになれる、そういう世界が出てくるわけです。でもときどきなんです。

 だから、そういう人に比べて、もうこれはだめだなと思う人は、やっぱりもう農村に帰るしかない。でも、農村に帰ってもだめだからアフリカに行こう、どこかへ行こう、そういうことで分散していく。

山田:やっぱりアフリカなんですね。中国では、自分の国の中で抱えきれなくなったからアフリカなど海外にまで行って、そこで雇用を生み出し、そこでお金を発生させて自分の国の人たちを養おうとか、そういう側面があるように思います。だから表から見た印象よりは実は中国というのは強硬でもないし、自分たちも強く感じているわけでもない。今、お話を伺って、また強く思いました。

丹羽:政府は強制的にアフリカに行けと言っているわけではない。彼らがもうやっていられない。だから、自分たちが考えて出ていくわけです。

 だけど、アフリカもあれだけの人間が生活しているわけです。さらに今は10億人の人口が、30年後には20億人になろうとしている。それだけ増えるのはアフリカだけです。そういう中で、中国だけじゃなくてほかの国も行くわけです。

 そういう中に中国の人が入っていくと、ほかの人よりはよく働くし多少は賢い。だから夢があるわけです。稼いで裕福になろうという競争心。そういうのがラテン系の人間にはあまりない。

 例えば、日本人だって、昔はアメリカへ流れ込んでいった。奴隷制度の廃止のときです。そこでは日本人がお金を貯める。ラテン系の人は稼いだらほとんど飲んじゃう。要するにラテン系は楽観的、日本人は悲観的。日本人は、これは困ったな、何とかしなきゃというので貯金する。稼いで故郷に錦を飾るという意味もあるかもしれないけど。それと同じようなことが、中国に起きつつあるわけです。

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