丹羽:私は思うんだけど、日本の生活保護世帯というのは、要するに相対的貧困率で見ると、これはだいたい16%です。例えば、中国で農民工というのは、3億人としますか、そのうちの全部が貧困じゃなくて、だいたい貧困層が20%ぐらいじゃないのかと思います。世界的に見ても、たいてい20%上位、6割は中間、20%は下なんです。

 どこの社会に行っても、どこの学校に行っても2割はできる人間がいる。そして2割はできない。では、できない人間をそこから外すと、今度は中間から下に落ちてくる人間がいて、2割ができる。また上からも落ちてくる。落ちてきても2:6:2というウエートは変わらないわけです。

 そういうことがあるから、農民工も、私が思うには、自分の生活が苦しくても淡々とやるというのは、上に行こうという夢があるからだと思います。

山田:その通りです。

丹羽:息子や娘のうれしい顔を見たい。お父さんやお母さんにも、自分の息子が頑張っているところを見てもらいたい。だから春節とかに、重いお土産を担いで帰る。隣近所の人に、こんなに自分は頑張ったんだとアピールする意味もあるから、かさばるものをいっぱい持って帰るわけです。お金とかを持って帰ればいいんじゃないかと思うんだけど、そうじゃない。すごいよね。

 そういうことを考えると、彼らはいつも夢を持っているから、自分が貧しくても耐えられるわけです。夢に向かってやっている。例えば昔、スポーツの選手にしても歌手にしても、有名になると何を考えるか。これでお父さんやお母さんに家を建ててあげられる。自分が苦しくても貧乏だと思ってない。自分はやっぱりそういうふうにお金を貯めて錦を飾る。そういう気持ちがあるから頑張れる。ところが今はそれは難しくなった。

山田:そうですね。

サービス業や海外に、農民工は分散する

丹羽:それは時代の流れだろうけど。しかし、必ず社会は2:6:2にまたなる。だから農民工の中で2割が上がる。すると、残った中には2割はやっぱり存在するから、彼らが上に上がってきて、そして絶対的な貧困層の農民工のウエートが減るようになってくるんじゃないかな。

 今、中国の経済構造は、変わってきている。昔と違って経済の構造からいうと第3次産業が増えてきている。昔は40数%。今は50%を超えました。中国経済の半分以上は第3次産業。アリババに代表されるようなインターネット産業など。それから会計士とか弁護士とか。

 製造業が今までは5割を超えていた。今は40%程度に下がってきている。そうすると53%の第3次産業と40%の製造業。あとの7%が農業のウエートになる。

 農業のウエートは今、日本はGDPの1%ぐらい。昔は10%だった。そういうことを考えると中国の農業のウエートがGDPに占めるシェアはずっと減ってきているんです。ただし、農村人口は依然として40~45%ぐらい。

山田:そうですね。

丹羽:ということは、経済の規模からいうと、分かりやすく10%が農業とします。人口はだいたい40%とする。そうすると簡単に割り算すると農業の1人頭のGDPは4分の1だ。だから中国全体の中で農村の1人頭の収益というのが全体と比べると4分の1という推定が成り立つ。

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山田:なりますね。

丹羽:それで何が起きるかというと、農業の規模があまり変わらないとすると、農民工がもうやっていけなくなっても農村へはもう帰れない。だから、やっぱり工業で栄える地方に分散していく。あるいは、サービス業や小売業、そういうところに分散していかざるを得ないんじゃないか。

 それができないとなると、今、アフリカなどの海外へ流れていくわけです。

山田:ふーむ。

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