丹羽:給料も、そんなに払えません。人口は韓国が5000万人で北朝鮮が2500万人。北朝鮮の1000万人が韓国に入ると、簡単にはいかない。

 それが一番よく分かるのがドイツ。東ドイツと西ドイツは20年かかってもまだなかなか同じ給料を払えない。ということを考えると、中国を例えば6つに分けたとしても、どことどこの省を一緒にするかを考えたときには、非常に難しい。

 貧乏な省同士を一緒にしたらえらいことだし、かといって格差があるところを一緒にするにも問題が山積み。そういうことを考えると、中国が貧富の差が接近するようなことになるのには、まだ20年やそこらはかかるかもしれない。

山田:ただ、今おっしゃった中で、権限を委譲するというのが中国共産党の場合はとても苦手じゃないかと思うんです。

丹羽:簡単にはできないです。でも、自分の信頼できる部下がいればできるのではないかと思います。今の日本だって子会社がいっぱいあって、その上に親会社がある。そして、子会社に権限を委譲している。だから国家がやることは習近平がやる。それが何かというと軍隊、それから通信、それから教育。どうしても国家が手を付けなければいけないことだけをやればいい。

山田:そうですね。香港はテストケースでやっているようなものですよね。ただ、外交と軍事だけは中央政府の管轄で、高度な自治というのが、今はだんだん怪しくなっているのが現実ですよね。

農民工にも格差がある

丹羽:でも、こういうふうに考えになるのがいいんじゃないかと思うのは、中国人民の5人に1人が農民工。ただ、農民工は全員が貧乏じゃないです。

山田 泰司
山田 泰司

山田:そうですね。

丹羽:農民工の中でも差がある。

 習近平は自分が国家主席になったときに、7000万人から8000万人の貧困層がいるといって、これを全部救い上げるという約束をしているんです。5年ぐらいの期間をかけて救い上げていく。そうすると毎年1000万人以上を救い上げていかなきゃいけない。

 でも、日本でもホームレスで生活している人がいるでしょう。死んだときに誰なのか分からなかったりするけど、預金通帳を見ると結構持っている人がいる。だから農民工の皆さんも出稼ぎに来ていて、結構お金を貯めていたりする。嫁とか子どもとか家族のために。

 要するに、中国では家族が中核の社会体制になっているんです。だから、息子や娘とかにつらい思いをさせないようにする、そしてホワイトカラーになってちゃんとした勤めができるように学校に行かせる。、そのためには自分はもうぎりぎりの生活にして食うや食わずでやっている。立派な人が多い。

山田:本当です。ただ、最近気になっているのは、北京でも農民工の追い出しみたいなのがあって、ここのところ問題になっていますけれども、上海でも先行していっぱいいっぱいになってきちゃったんですね。彼らを抱えていく余裕がだんだんなくなってきている。

 中国全体では表向きには、「一帯一路」で世界にどんどん出ていくというような、こわもての経済強国を演じているのとは裏腹に、内情を見ていると少し余裕がなくなってきているのかなと感じるところがあります。丹羽さんはどのように思いますか。

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