全6846文字

山田:なるほど。私が最初に中国に行ったのは語学留学をした1988年なんですけれど、すぐ思ったのが、やたらに友達、友達と言うよなと。それは建前なんですかね。

岡本:逆にいうと信頼できる人をつくりたいという願望がある。本当に信用できる人たちにはすごいですよね。本当に親密になったら。

山田:僕も本当にどうしてここまで親身にしてくれるんだろうというのがありました。

多様すぎる中国で信用できたもの

岡本:それはおそらく、利益と一体化するのでしょう。地縁、血縁で中国人というのは凝集しますけれど、逆に言うと、それぐらいしか信頼できる人がいない。社会の信頼・信用を醸成する装置がそれしかない。

山田 泰司氏

山田:そこをちょっと詳しく教えていただきたいです。

岡本:中国の貨幣制度はよく分からない最たるものですが、昔の中国は時と所によって、全然使われている貨幣が違っていた。もうちょっとさかのぼると、銀の地金を使っていた地域もあった。結局、中国で統一的に流通する通貨というのができなかった。

 それは大きなエリアで、このお金だったら、この紙幣だったら、と信用できる信用度ですか、それを保証するような装置がない。例えば銀行だったりとかが通貨制度をつくって、兌換をしてとかするんですけれど、中国の政府はそういうことを一切しない、というか、できない。社会が多様すぎて。あるいは相対的な権力というパワーがなさすぎて。

 そうすると経済活動って、見知った人たちの間で、これはこういう価値で通じるようにやりましょうかとなる。今でしたら、商品券とか。

 そうしたら、みんな顔見知りですし、そこで協力しますし、協力したらみんなで利益が分かち合える。そういった商店街がいろいろあったら、商店街ごとで商品券って違うじゃないですか。例えば日本の円と、アメリカのドルという感じで、コミュニティーそれぞれで違う。そうすると、そのコミュニティー同士が取引したい、交流したいとなるとどうなるか。共通で価値が分かるものが必要。

 となると貴金属。金とか銀とかでしか、取引ができないという形で、中国の昔の経済社会って成り立っていた。昔はお金がいろいろあったというのが民国時期にはいくつも記録が残っています。「雑種幣制」なんていいます。それが嫌なので、中国で1つにまとめたいといって、蒋介石が頑張ったのが幣制改革だったりとか、毛沢東の人民元だったりとかするんです。

 要するにそのコミュニティーの中では通じるので、しかもそれを破ったら制裁を加える規約とかいうのも、自分たちでつくっているんですよ。それは国家の法律とかでは全然なくて、ギルドの内部で残っている。

山田:今の中国には、ギルドはどういう形で残っていますかね。

岡本:いや、どうなんでしょうね。でも、ないはずはないだろうと。