星野:だって努力とかは関係ない。本当に農村戸籍と都市戸籍だけで差別されているわけでしょう。共産党、マジでどうにかした方がいいのでは?
山田:共産党もそうだけど、やっぱり都市の住民がもうちょっと関心を寄せる時期に来ている。星野さんが中国に頻繁に行っていたときには、そういう農民戸籍とか都市戸籍というのは意識されてましたか。
やっぱり夢が見られない農民工
星野:聞いていましたし、農村から出稼ぎする人たちの群れを都会で見ていました。一般の人は、農村から大勢が移動する様を見て「盲流(モウリュウ)」と呼んでいたときです。社会現象として出現したころですよね。
それは1990年代の前半。だから、四半世紀たった現実がここにあるわけです。その盲流と言われた人は、四半世紀たって、やっぱり夢は見られないという現実にだんだん気付いてきてしまったわけですね。

山田:気付いてしまった。そればかりか今度は都会に生まれていても、底辺の人たちは、「もう夢が見られないかも」というところに今、来ている。
星野:農民工の人たちが夢を見られなくなって来たというのは、都会に建てるものが飽和状態になったということが関係しますか?
山田:それもそうですね。あとは農民工の人が大勢働いていた雇用先の製造工場、例えばiPhoneを作ったりする工場では、人件費をもう上げられない。
人件費が上がった、上がったと日本のメディアなどは報道していますが、それでも1万円から始まったのが5倍の5万円になった程度。でも共産党はとにかく福利厚生などを全部企業にやらせるから、正規に雇うとすると、お給料が5万円でも、福利厚生費を併せると10万円ぐらい掛かってしまう。そうなってくると、企業とすれば、ベトナムで作ろう、ミャンマーで作ろうと。
星野:どんどんそうなってしまいますね。
山田:それとともに中国の経済成長というのが鈍化してきた。中国の場合は成長率が10%ぐらいあって、ようやく農民工も恩恵にありつけるというぐらいの感じです。今の6%とかの成長時代になってきちゃうと、彼らを満足させるだけの余力が都会にも企業にもなくなってきてしまっている。
だからこの本『食いつめものブルース』の表紙の彼なんかも、子供が中学生だったときには、「やつを大学に行かせるためにやっているんだ」と言っていたんだけど、だんだんあきらめてきている。「田舎の子供はみんなこんな感じだから」といって。
星野:もう少しで切れちゃいますよね。これまでゴムを引っ張るように酷使されてきて、それで夢がないと分かってしまたら、パチンと切れてしまう。
私が中国を訪れていた当時は、みんな目がきらきらしていましたよね。全然まだ挫折はしてないし、格差が付いていない。やっぱり人間を絶望させるのって格差なんですね。
私は政治のことはあまりよく分かりませんが、世界のトップを目指す前に、中国はやることがあるだろうと言いたいですよね。思いませんか。
山田:思いますね。
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