農民工はどこに行くのか?

山田:先生がおっしゃるように、習主席は今の経済のことが全部分かっている。とにかく都会に農民工を抱える余裕がなくなってきているんです。

川島:そういうことですね。

山田:だから一生懸命彼らを国に帰そうとしているんだけど、やっぱり戻ってきちゃうんです。それでさまよい始めているんですけど、彼らは一体、どこに行くんでしょうね。非常に私は怖いんです。

川島:だから中国当局は、押さえ付けでしかないんだよね。

山田:押さえ付けるか。

川島:胡錦濤は、彼らにあめ玉をなめさせていけば何とかなると考えていた。和諧社会と言っていたんだけど。今はどうもあめ玉がなくなったんだよね。あめ玉をやっていたらチャイナ・プラス・ワンになっちゃうので、習主席が決めたのはあめ玉はやらないこと。でも彼らは、不満を持っている。どうしたらいいか。警察国家ですよね。今明らかにそちらに進んでいる。

山田:地方の都市をハイテクの町にして、雇用をつくりましょうみたいな報道もちらほらあるんですけど、あれじゃ追い付かないんでしょうか。

川島:一番の例は深センをそうしたいと言っていますよね。深センには確かに優秀な人たちが集まってきていて、中国のシリコンバレーにしようとしている。でも、所詮1000万人ですから。中国は13億人、明らかに数が小さい。

 それからそこがいくら発展しても、本質的には9億人の農民の底上げをどうするかという問題なんです。それに対しての答えにはならないですよ。ほとんどが中卒か高卒なんですよね。

山田:そうですね。「農村はみんなこんなもんだ」と言って、子供を高校に進ませずに働かせる親がいまだにとても多いです。

川島:勉強してないから農民なんです。農民の中でも、すごく優秀なら都市戸籍になれるんです。農民でもチャンスがあるんですよ。小学校で1番、中学校で1番。勝ち抜いてトップになれば、農民でも北京大学とかに入れて、そして都市戸籍を取れるんです。

 だから中国人の中には、貧困は自己責任という感情があるように思います。日本からだとそう見えるんです。私は大学にいて、そういうのを見ているから。だから彼らの心の中では、小さいときに勉強しなかったやつらを、対等に扱うことはできないとなるんです。私はあのときに一生懸命勉強したけど、そのときにいつも遊んでいたんだから、農民だと。徹底した学歴社会です。

山田:中卒で働きに出て、1万元ぐらい稼いでいる内装屋さんが知り合いにいます。まだ20代前半。背中に一面の入れ墨を入れてるんです。彼は中卒で重慶から出てきて、北京にまず行ったらしいんです。そこにしばらくいたんだけど仕事を辞めて、その後、海南島に流れていった。僕は海南島で知り合ったのですが、その彼は北京を離れるときに背中に入れ墨を入れました。要は、ものすごい差別をされたらしい。

川島:ああ、そういうことね。

山田:自分の中で、とにかく生き抜いてやるというしるしですね。背中に入れ墨を入れようが何しようが、根性を出してやるしかない。彼も農民です。